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それぞれの白球
加持編 血と汗の茶色い青春
二話 逆鱗
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ャンプスクワットだ!」と補足されてようやく、どうするのかが分かった。
目を閉じて、ジャンプスクワット。
ただでさえ走り込みでガタガタの下半身が、更に追い込まれる。

跳び続けていると、あちこちから、悲鳴や悶える声が聞こえてくる。どうしたんだろうか?
足でもつったのだろうか?
俺は閉じた目をうっすらと開いた。
俺の前で、先輩が大きく右手を振りかぶっていた。

「ぐあっ!!」

次の瞬間、その先輩の拳は俺の腹に叩き込まれた。全くの加減なしのパンチを食らったのはこれが初めてだった。
無意識に、声にならない声が出る。
内臓に衝撃が響いて、ジンジンと耐え難い痛みが広がる。視界がぐにゃりと歪んだ。

主将が目を閉じろと言ったのは、誰に殴られたのか分からないようにする為だった。俺以外にも、だいたいの同級生が殴られて倒れていた。拳で殴られたらまだ良い方で、バットを持ち出してくる先輩も、ボールを投げつけてる先輩も居た。山口はこれまでの積み重ねだろうか、集中的にリンチされていた。

「何いつまでも寝てやがる!さっさと起きろこのクソが!」

先輩の怒鳴り声がするが、もう誰の声かも分からない。
間違いなく、ここは地獄だった。



ーーーーーーーーーーーーーー


1時間以上もこの拷問は続き、俺たちは生傷をいくつも作って解放された。
痛む体を引きずるようにして俺たちは寮に戻る。山口は両脇を誰かに抱えられないと立てないくらいにやられていた。
一方、白神といえば、せいぜい足腰が立たなくなっていたくらいだ。
白神だけはこの制裁からは除外され、隅で正座させられるに留まっていた。

人は、叩きやすい高さに出た杭を叩く。
それがよく分かった気がした。

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