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それぞれの白球
加持編 血と汗の茶色い青春
二話 逆鱗
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で有数の才能が集うはずの是礼でもその球は目立っていた。一軍の練習試合でも、いきなり投げさせてもらい、堂々たるピッチングを披露して、先輩も白神にだけは一目を置き始めた。

ま、特待生の中でも白神は別格だったみたいで、初日から膝蹴りを食らった山口も特待生だと言うのに、すぐに俺たち推薦組と同じ基礎トレーニングの方に回された。こいつの場合、初日の件が知れ渡ったおかげで一緒にプレーする先輩の圧力が半端じゃなかったらしい。
つい一ヶ月前まで御山の大将やってた1年が、皆目をギラつかせてる先輩に混じって、やらかせば殴られるかもって意識の中、マトモにプレーできる訳がねぇんだよな、普通は。
その点、白神は死ぬほど鈍感なのが幸いした。

ま、俺たち1年としちゃ、白神が認められるのは他人ながら嬉しかったよ。
俺たちの代の柱になってくれる。俺たちの代には白神が居る。
そんな気持ちになれるからな。



ーーーーーーーーーーーーーー


みんな凍りついた。
監督も、コーチも、上級生も、もちろん俺たちも。

夏の大会まであと一ヶ月の、追い込み練習中。
個人ノックを受けていたセカンドの先輩の顔面に、イレギュラーバウンドが直撃した。鼻血を出して倒れた先輩は、救急車で運ばれていった。

この先輩は打順も3番の大型セカンドで、チームの柱だった。この時期にきて戦線離脱ともなれば、この夏の甲子園にも黄信号が灯る。




でも俺たちが心配したのはそんな事じゃない。先輩らの不安、怒り、それらがどこに向くのか、という事だ。そんなもの、グランド整備を担当する俺たち1年に決まっている。
事故が起こった瞬間、先輩らの俺たちに対する視線が更に厳しくなったのが分かった。
メンバー入りを決める最後のアピール期間で、当落線上の先輩は皆目を血走らせている。
練習は激しさを増し、疲弊する。
その中で、1年の雑用のヘマも目立ち、1年への苛立ちも募ってきていた。
そこに来て、この事故だ。
恐怖に震えずには居られない。
そしてその予測は現実になった。



練習後、1年生は全員室内練習場に集合させられた。初日の晩に俺たちを怒鳴ったあの主将が、あの時の10倍ほどの怒りを醸し出して俺たちを待っていた。

「おめぇら、今日のこのグランドはどういう事だオラァ!!何で扶桑がケガしたのか、分かってんのか、あぁ!?言ってみろやこのクズ共!!」
「「はい!自分達の責任です!」」

もうひたすらに罪を認めるしかなかった。
主将の説教は、日常生活からグランド内に至るまでの事で、10分以上続いた。

「お前ら、手を頭の後ろに組め」

不意に主将が命じた。
言う通りにする。

「目を瞑れ」
「跳べ」

何をしたら良いのか分からなかったが、
「ジ
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