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《SWORD ART ONLINE》ファントムバレット〜《殺し屋ピエロ》
腰抜け
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驚いた風にこちらを見た彼女と目を合わせる。表情は平静を保っていたが、その実、内心で俺は激しく動揺していた。
これはチャンスなんじゃないか?
気道がぎゅっとすぼまる感覚を味わった。
考えてみたら、俺は”あのこと”を彼女に伝えるために、この場をもうけたのではなかったのか。以前と違って詩乃とも知り合えたし、ここで話を切り出しても、もう不自然ではないはずだ。俺は気づいていた、高校の入学式で彼女を人目見たときから......
緊張で頭が可笑しくなりそうだ。
ーー言えよ。早く言え!
「......いや、なんでもない。また明日な」
俺はへらっと笑ってパタパタと手を振った。はぐらかすようなこちらの態度に、不思議そうな顔をした詩乃が「うん、それじゃ」と言って、今度こそ店から出て行く。
後に残ったのは強い苛立ちと、空っぽのカップだけだった。
「......」
じんじんと鼻の奥が痛んでくる。今日だけじゃない。今まで何度も機会はあったのだ。
入学式の後、初めて廊下ですれ違った時。
たまたま席が近く、話しかけられる距離に座っていた時。
住むアパートが、自分の家からそう遠くないと気がついた時。
だというのに、これまでろくに話せさえしなかったは、すべて自分の弱さのせいだ。ーー俺は彼女に伝えたいのではなく”伝えなければならない”。しかし、それは同時に俺の罪と後悔を晒しだし、懺悔する瞬間でもあるのだ。そのことが、どうしようもなく恐ろしい。
「......くそっ、またかよ......」
余りの情けなさと虚しさから、絞り出すように呟いたその言葉は、誰もいない椅子にぶつかって消える。俺はぎゅっと目をつぶって歯を食いしばった。一体いつになったら言えるのだろう。
ーーだから、お前みたいな腰抜けは嫌いなんだよ。
ふと、メイソンが嗤った気がした。
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