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《SWORD ART ONLINE》ファントムバレット〜《殺し屋ピエロ》
腰抜け
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彼女は怒っていないらしいのだ。だったら、笑っていてもらうことに越したことはない。
「そんなことねーよ。現に学年屈指の馬鹿と会話できてんじゃねぇか。俺と話せれば大抵の人間とコミュニケーションはとれるぞ」
「屈指の馬鹿って......道嵩君そんな頭悪いの?」
「英文が呪文に思えてくる程度にはな」
口をパカッと開け、わはははは、と無表情に笑うと、今度こそはっきりと詩乃も笑った。声を上げて笑うことのない、どこか堅い笑みだったが、妙にそれが嬉しかった。
「今日もそのことで顧問から怒られてさぁ、ゲーセン行こうとしてた直前だったからまいったぜ」
「へぇ、あそこ通ってるんだ。そう言えば一度も寄ったことなかったな私」
先ほどより大分うち解けた様子で詩乃は言った。意外と話せるじゃん、と笑いつつ俺は前後の状況を忘れ、友達に対するような口調で相づちを打つ。
「うげぇ、ゲーセン寄らないでどこ行ってるんだよお前」
「そりゃスーパーとかCDショップとか......」
「スーパー? あぁ、そういや一人暮らしだっけ。もしかして自炊とかしてるの?」
「うん、申し訳程度だけどね」
「やべぇ、朝田さんマジぱねぇっす」
話しているうちにぎこちなさが消え、すらすらと言葉が口から出てくるようになった。当然だが、俺は彼女について思っていたほど知らなかったらしい。伏せられがちだったように感じられた目は、実は沢山のものを映しており、ロボットのようだと感じられた無機質さは、無駄を嫌う彼女の性格故だった。
途中、俺がポロッと漏らした好きな歌手の名前に詩乃が食い付き、意外な共通点があることにも驚かされた。人は見かけによらない性質を持っているのが常だが、この時ほどそれを実感させられる場面も珍しい。俺はカップが空になっているのも気がつかないで、他愛ないことを詩乃と話した。
その後、彼女が時計を見てから慌てて立ち上がったのは、だいたい30分ぐらいたってからだろうか。俺と言えば、時間の事などまったく気にしていなかったので、剛拳6の武勇伝を急いで止めた。話を聞いていた彼女が、申し訳なさそうに口を開く。
「ご、ごめん。この後ちょっと予定があって......」
「おお、いいよいいよ。むしろ付き合わせて悪かったな。伝票は俺持っとくから安心していいぜ、苦学生?」
大した額じゃないけどな、と肩をすくめると、彼女もふっと表情を緩める。
「うん、今日は......その、いろいろとありがとう。またね」
律儀にそう言った彼女がひらりと身を翻す。急ぎ店から出て行こうとするその背中に、俺は反射的に声をかけていた。
「......なぁ、詩乃」
思わず下の名前で呼んでしまったが、そのことを心配している余裕はない。ちょっと
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