第三章 始祖の祈祷書
第一話 蘇る者
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だよ! 誇りたまえ! きみが倒したのだ! 彼は、ずいぶんと余を嫌っていたが……、いざ死んだと聞くと、妙な友情さえ感じてしまうよ……。ああ、そうか! 死んでしまえば、誰もが友達だったな!」
勢いよく話しかけられながらも、ワルドは変わらず怯えた目で辺りを見回すだけで、男の話しを聞いてはいない。
それでも前を行く男は気にすることなく歩き、目的の場所である、破壊された礼拝堂までたどり着く。
そこでは、貴族と思われるマントを身に纏った男たちが何かを囲むようにして立っていた。
現れたワルドたちに気が付いた男たちは、すぐに地面に膝をつくと、頭を垂れる。
「クロムウェル閣下。手紙を見つけることは出来ませんでしたが。ウェールズの死は確認致しました。ウェールズの亡骸はそこに」
頭を垂れた男の中の一人が、先ほどまで男とたちが取り囲んでいた場所を指差すと、そこにはウェールズの亡骸があった。何かの間に挟まれていたのだろうか、亡骸は潰れてはいない。
悔しげに顔を歪めたウェールズの亡骸を確認した男、クロムウェルは口の端を歪めると、頭を垂れる男達に見回す。
そして、男たちを見回したクロムウェルは、目をかっと見開き、両手を振り上げると、大げさな身振りで演説を開始した。
「アルビオンの王が死に、そして! アルビオンの皇太子であるウェールズも死んだ! アルビオンの王家がここに滅んだのだ! これからのアルビオンは、我々選ばれた貴族たちによって統治され! 結束し! そしてその鉄の『結束』により、聖地をあの忌まわしきエルフどもから取り返す! それが始祖ブリミルより余に与えられし使命なのだ! そして『結束』には、なにより信用が第一だ。だから余は子爵、きみを信用する。手紙を確保出来なかった些細な失敗を責めはしない」
クロムウェルに声をかけられても、ワルドの様子は変わらない。いや、さらにひどくなり、体を小刻みに震わせながら落ち着きなく辺りを見回している。
それを感動のあまり、動揺しているものだと勘違いしたクロムウェルは、ワルドの様子を気にせず演説を続けている。
「その偉大なる使命のために、始祖ブリミルは余に力を授けたのだ!」
「閣下、始祖が閣下にお与えになった力とはなんでございましょう? よければ、お聞かせ願えませんか」
膝を着いた男の中の一人、最も年若い男が、クロムウェルの演説に感動したのか、涙が滲む目で尊敬の眼差しをクロムウェルに向けながら、クロムウェルが言う力のことを聞くと、クロムウェルはその男に笑いかけた。
「魔法の四大系統はご存知かね?」
「? ええ」
クロムウェルに反対に質問をされた男は、戸惑いながらも頷いた。クロムウェルの質問は、子供でも知っていることだ。火、風、水、土の四つである。
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