第三章 始祖の祈祷書
第一話 蘇る者
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事情は説明していないこと。
傭兵たちに襲われた際、二手に分かれ、ルイズたちが先にアルビオンへと向かう船に乗ると、空賊に襲われたが、その空賊の正体はウェールズ皇太子であり、無事にアルビオンまでたどり着けたこと。
ウェールズ皇太子に亡命を勧めたが、断られたこと。
そして……ワルドとの結婚式を上げることになり、ルイズが結婚を断ると、ワルドが豹変し……ウェールズを殺害し、ルイズが預かった手紙を奪い取ろうとしたこと……ワルドが『レコン・キスタ』のスパイであったこと……。
「……手紙だけは何とか死守しました」
ルイズが顔を俯かせながら手紙を差し出すと、アンリエッタは一度目を瞑り微かに頷くと、ルイズが差し出した手紙を受け取る。
「ありがとう、ルイズ。……でも、まさかあの子爵が『レコン・キスタ』だったなんて」
アンリエッタは受け取った手紙を胸元に引き寄せると、自嘲するように笑った。
「……これでは私がウェールズ様を殺したようなものね……」
「それは違いますっ!」
「ルイズ?」
「姫さまは何も悪くありませんっ! 悪いのは、ワルドの手からウェールズ様を守れなかったわたしなんです……目の前だった、手の届くところだったのに、何も出来なかったわたし……です……」
「ルイズ……」
顔を俯かせたルイズは、体を震わせながら涙をポロポロとこぼしている。
「わたしが……わたしが悪いんです……だから姫さまは何も悪くなんかありません……」
「……」
部屋の中に沈黙が広がる。
微かに聞こえるのは、ルイズがこぼす涙の音だけ。
そんな中、顔を俯かせているルイズを見つめるアンリエッタは、ふっと微かに笑うと、優しくルイズを抱きしめた。
「ルイズ。優しいルイズ、ありがとう……」
「姫さま」
「ウェールズさまが殺されたのは、決してあなたのせいではありません。彼は閃光と呼ばれたメイジ、その彼を止める事など、誰にも出来はしなかったでしょう……」
「……」
「だからルイズ、そんなに自分を責めないで。あなたは何も悪く何か無いのだから」
そう、王女もルイズも悪くはない。悪いのは俺だ。最初から疑っていた、奴に疑惑を抱いていた。なのに俺は何もしなかった
ルイズと王女のやり取りを横目に、自身の両の拳を血がにじむ程に握り締めながら、自分のことを責める。
ワルドのことを疑いながらも、最後まで行動を起こすことのなかった自分を、まんまとワルドの罠にかかり、ルイズと引き離された自分を、助けることが出来なかった自分を……
いつも……いつもそうだ……結局俺は……何も出来ない……
アンリエッタがルイズから離れ、互いに顔を見合わして笑って
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