第三話
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、ただ気絶しているだけ。それにホッと息をつき、しゃがみこむ。
辺りの警戒は忘れない。いつ、あの黒い『何か』が襲ってくるか分からないのだ。もう油断はできない。
そこで朧は、また不審なものに気づいた。
百合の花たちは、その身を散らしていた。再生する素振りは見られるが、やはりそれは難しいのだろう。起き上がってはたおれを繰り返し、そして力尽きたように萎れた。
「なんだったん、だ。やつらは」
そうつぶやいた時だった。おそらく朧の声に反応したのだろう、リリィの体が少しうごめく。そして、次第に開く目。それにまた一息ついて、リリィに話しかけようと口を開いて――
「――――はッ!?」
抱きしめていた少女、リリィの手が、真っ赤に染まったのだ。
その手の行き先は、今、目の前にいる最愛の人。
その身体を貫いた手刀を見て、ニヤリと笑うリリィ。
――朧の身体を貫いたリリィは、その腕を無造作に引き抜く。
朧は倒れた――が、その勢いを利用し、転がってリリィから距離をとる。
そして向かい合い、リリィを、その殻を被った『何か』を睨みつける。
「きさッ、まッ。リリィを、何処へやった」
その台詞に、また笑い。リリィらしき少女は口を開いた。
「『平穏の守護者』。あなたの恋人は、死にましたよ」
と、何の感慨も無く。その『何か』はそう口にした。
「何をいっているッ! 貴様は何物だッ!」
「慌てても意味は無いですよ、『平穏の守護者』。それに、あの少女が消えた理由も、一概に私だけが悪いとは言えませんよ」
「だから、何を――」
その言葉を制すように、『何か』は両腕を横に薙ぐ。身構えるが、何も起こらない。ただに身振りだったようだ。
「私は、『平穏の守護者』。つまりあなたへの抑止力です。あなたが世界のバランスを保つという役目をないがしろにした場合の、ですが」
「抑止力、だと?」
「はい。『蛇』というものは神聖な存在ですから。力を蓄えれば、龍にもなれる。そんな存在です。それを司るあなたが、もし何か一つのものに肩入れをした場合の抑止力です」
「馬鹿なことを。世界は今、十二分に平穏だろう。私に役目はまだ先のことだ」
「だからですね、『平穏の守護者』。私は、あなた自身が世界のバランスを崩すことに対しての抑止力なんですよ。世界がその時平和だろうと、そうでなかろうと関係ないんですよ」
「…………」
クルリと一回転する。真っ黒な修道服が、ふわりと舞った。
「この少女にとても思い入れがあるみたいじゃないですか。素晴らしいくらい甘い過思い出をお持ちのようで」
「お前には関係ないだろう?」
「はい、ないですね」
「…………」
気味の悪い。奥底が見えない。目
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