第三話
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なぁッ!?」
足が動かなかった。その件の足。それを確認して目を見張る。そこに巻き憑かれていたのは、周りに咲き誇る百合のツルだったのだから――
「クソがッ! どけッ! 邪魔を――ッ!?」
抵抗し、振り払うが、それは四肢に巻き憑き、朧の動きを規制する。腕に、足に、身体に巻き憑く。
さらに気付く、目の前にいるべき存在が消えていた。どこだッ? どこへ行ったッ? 最悪の事態だった。このままではリリィにも――ッ!
――振り返る。リリィを確認する。
そこにあるべき、守らなければいけない少女の姿は――なかった。
「り、リリィッ! どこだッ! リリッ――邪魔を、するなぁッ!」
衝撃の波で、百合のツルを破壊する――が、それは直ぐに再生し、朧に襲い掛かってくる。リリィを探さなければ――いや。リリィの居場所は分かっている。リリィの気配は大樹の近くだ。そしてその近くにあの『何か』の気配も――……
「邪魔だッ!」
足を一閃ッ! 横に薙ぎ、百合の花を吹き飛ばす。百合は再生する、それも瞬時に――だが、その一瞬など、朧には関係ない。
一瞬にしてトップスピードに入り、大樹の、リリィの下へと――ッ!
また油断。朧は焦っていた。それが原因で、目の前に迫る、百合のツルに気付けなかった。それを察知しても、もう遅かった。そのツルは、朧の身体を貫かんと、その鋭利な枝先を、朧に向けて――
急に暗転した視界。目を覚ますとそこは、見慣れた大樹の下だった。あれ? 朧は――ッ!
「朧ッ! どこッ! おぼ――ッ!」
朧を探し、周りを見回したところで、気付いた。自分の目の前にいる、黒い『何か』に。そして、朧がその『何か』に――何を考えているッ! 馬鹿なことをッ! 朧が負けるわけ無いッ!
震える身体を押さえ込む。朧は私を絶対に守ってくれる。だからこそ私も朧を助けるんだッ!
「あ、あなたは、だれ?」
その黒い『何か』は、リリィに振り返った――ように見えた。少なくともリリィには。
「――――」
「え?」
その言葉に、驚愕する。何を言っているんだ、この『何か』はッ、意味が分からないッ。
「あなた、何を言って――ッ!」
つかみ掛からん勢いで、その『何か』に詰め寄ろうとしたリリィだったが。その『何か』の手元にある、それに驚いて足を止める。
それは黒い本だった。祖母に貰った、花柄の装飾のついた魔道書。たった一つの忘れ形見だったのだから。忘れるはずもない。
「あなたが、なんでそれをッ!?」
「……―、――、―」
――え? 今、なんて言ったの?
「私は『ラグナロク』……あなたが、この『箱舟』の意志、だから」
突然、魔道書
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