第二話
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あれば、そうするべきだった。
それが、あの悲劇の『ラグナロク』への第一歩だった。
風呂から上がり、ベットへと寝転がった朧。それから目を閉じ、浅いながらにも睡眠をとろうと意識を暗転させようとした時だった。
朧の部屋のドアが開き、リリィが入ってきた。
「どうかしたか?」
「ううん、なんでもないの。ただ…………」
少し下を向き、それから意を決したように頷いた後。リリィは朧の布団の中へと潜り込んだ。
そして朧の身体に腕を回し、力一杯抱きしめる。
「…………なにかあったか?」
「ううん、私は大丈夫だけどね。朧が……」
「私が?」
「朧が寒そうだったから、暖めてあげようと思って」
その言葉に息を呑み。そして柔らかな笑みを浮かべ、リリィの身体を抱き寄せた。
「朧?」
「そうだな、すこし寒かったんだ。ありがとう、リリィ」
「――うん、大丈夫。私も暖かいよ」
「それは良かった」
そのまま二人は、抱きしめあいながら夜を過ごした。
その数日後の夜のことだ。
朧はリリィの手をつなぎ、あの百合畑を歩いていた。朧がリリィを連れ出したからだった。
「ねぇ、朧。なんであの木のところまで行くの?」
「行けば分かるさ」
そう言って朧は、リリィの手を握る強さを少しだけ強くする。
「朧の手、暖かいね」
「そうか……」
朧は『蛇』だ。蛇は変温動物。寒いところは苦手なのだが、それでも暖かいと言う少女。そう言ってくれる。その暖かい手を、朧は握りなおす。
「――――そろそろか」
「え?」
「急ぐぞ、もう直ぐ始まる」
「何を言って――きゃあッ!」
突然、朧がリリィの身体を抱き、走り出した。それもお姫様抱っこで、とんでもないスピードを出しながら。百合の花たちが、冷やかすように揺れる。
そのまま数秒程度でお花畑を抜け、大樹の下まで辿り着いた。
「まだ、時間前か。間に合ったぞ――リリィ?」
ふと自分の抱きかかえている少女を見ると、顔が真っ赤だった。さすがに早くしすぎたか、と反省。リリィをゆっくりおろす。
「はや、すぎる、よ。お、ぼろ」
「それはすまなかった。大丈夫か?」
「だい、じょう、ぶっ」
それでも、顔が真っ赤なのはそれだけが理由ではないだろうに……
それから少しして落ち着いたらしいリリィの横に座り空を見上げる。雲ひとつ無い空には、たくさんの星が爛々と並んでいた。
「綺麗……」
「そうだな、だがメインはこれじゃない」
「え?」
「――――ほら、始まった。時間ピッタリだ」
その朧の顔につられて上を向く。
「あぁッ」
天高くにそびえていた星が、一つ、また一つと堕ちてい
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