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とある蛇の世界録
第二話
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開いた。リリィは今風呂に入っている。それならば敵襲か、と思いそうなものだがそうでもない。

「父様。久しぶりだな」
「久しぶりだな、ニーズへック」

 ニヤリと笑い、朧の向かいに座るニーズへック。その顔をまじまじと見つめる朧。

「どうした、何か用か?」
「理由くらい、父様も知っているだろう? 『黙示録』の再来だ。まさか二度目が来るとは思っても見なかったが」
「馬鹿な。聖書の神は二度と『黙示録』は起きないといっていた。一応、それが聖書の神の遺言と言っても差し支えないんだぞ?」
「あぁ、それでも私の力が覚醒しているということは、そういうことだろう?」
「だが……」
「どちらにせよ、『黙示録』は再来する。それも近いうちに、だ。次は人間も滅ぶかもしれない」
「聖書の神のいない今、『箱舟』の建設も不可能ということ、か?」
「まぁ、そういうことになるな。性質こそ違えど、『箱舟』は生物の復興には欠かせないものだからな」
「ちっ、面妖な」

 ニーズへックは、朧の紅茶に手を伸ばす。

「ん、うまいな。あの小娘が淹れたのか?」
「知っているのか? まぁ、そうだ」
「ふーん」

 興味はないらしい。ニーズへックは紅茶を飲み干し、立ち上がり窓に足をかけた。

「私はもう行こう、また『黙示録』の日に、父様」
「…………あぁ、また」

 ニーズへックは、闇世の中に消えていった。それを見計らったようにリリィが風呂から上がってきた。

「朧、お風呂次どうぞ」
「あ、あぁ。分かった。ありがとう」
「? どうかしたの? 朧」
「いや、なんでもないよ。大丈夫だ」

 リリィは訝しげに朧を見るが、直ぐにやめた。朧を疑うのはよそう、と思ったからだった。そのまま、先ほどまで朧が座っていた椅子に、深く座り込んだ。



 浴槽の中、朧は沈思黙考していた。
 ニーズへックの役目は、『黙示録』においての死者の運搬。そのための力がニーズへックに戻ったのだとしたら、やはりそういうことなのだろうが。
 だからといって、聖書の神が嘘を教えたかというと、それもありえないことだ。ならば、一体どういうことなのだろうか……

「考えても、無駄……か?」

 やはり難しいところだ。朧の『蛇』の中にも、未来を予測するタイプの『蛇』は存在するが、それを使用するのは出来るだけ避けたかった。
 なぜならば、それを使用し、未来の改変に動くことによって、本来ありえなかった未来へと、世界を導いてしまう恐れがあったからだ。
 それほどまでに、朧の『蛇神』としての力は世界に対しての影響力が大きいのだから。

「だが、それでもリリィだけは……」

 だが、このとき朧は、その未来予知の能力を使うべきだったのだ。本当に、リリィを護りたかったので
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