風紀委員
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昼休みも半ばになったころ、妹の梢が俺たち三年の教室に入ってきた。
「すみません、夏目先輩いませんか」
夏目に用があるみたいだ。俺は教室の前に立っている梢のところへ歩いた。
「夏目がどうかしたの?」
「夏目先輩、風紀委員に入ったんだけど、まだ仕事内容を知らないから委員長の私が直々に教えることになったの」
へえ――――え?
「お前、委員長なの? 一年なのに?」
普通委員会活動は最高学年が長になることが多い。少なくとも一年が委員長を務めたなんて話聞いたことが無い。もしかしたら押しつけられたのかもしれないと思うと気になった。
「そうだよ、私自分から立候補したんだ! えらいでしょ〜」
梢はそう屈託の無い笑顔を浮かべた。この笑顔を見て、別に押しつけられたってわけじゃないんだなと確信できた。
よく思うことなのだが、妹の笑顔って最高に可愛くね?
まあ、それはいいとして、夏目を呼ばないと。
「おおい夏目! 委員会のことで説明があるんだと」
すると教室の一角に出来ていた群れの中心から夏目が出てきた。
くそう、まだテストの話で盛り上がってたな。
「ああ、ちょうどよかったわ。私風紀委員に入ったものの何をすればいいのか分からなくて……。委員会の集まりは一カ月に一回だっていうし」
「でしょでしょ? そんな先輩のために私が手とり足とり教えちゃうよ!」
「元気な娘ねえ、あなたの妹は」
「……なんで兄弟だって分かったんだ?」
「だって顔つき……目とかすっごく似てるじゃない」
そうか? 俺は生まれてから今までの人生で一度も梢と似ているなんて言われたことはない。
なんとなく夏目はものすごい観察眼をしているような気がするから他の人は気付かないくらいの共通点に気付いたのかもしれない。
「へへっ、にぃ、私たち似てるって! やったね」
「どこがどうやったね、なんだよ。俺が可愛いお姉ちゃんで、それと似てるとかじゃないんだからな。兄と顔が似てて嬉しい奴なんていないぞ普通」
「じゃあ私普通じゃないみたいだって嬉しいんだもん!」
「っ……」
全く……、梢は時々こんな歯が浮くようなことを言う。俺はそういうのが嬉しいのだが、やっぱりもう梢も中一なのだからそろそろ兄離れをさせなくては、とも思う。
「で、委員長さん――」
「あっ、私の方が後輩なんだから委員長なんて言わなくていいよ!」
じゃあお前は先輩に向かってため口はやめろよ、と心の中で苦笑する。
「じゃあ……梢ちゃん。そろそろ委員会活動の説明をしてほしいのだけれど……」
「はっ! にぃのせいでそのことをすっかり忘れてた!」
「俺のせいにするなバカ」
「なっ、私バカじゃないもん! バカって言う方がバ――」
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