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とある蛇の世界録
鏡面世界のクロムダスク 第一話
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そうやってお昼過ぎまで話し続けた。

「あのね、おなか減ってない?」
「うん?」

 朧は蛇の集合体。そんなことは起こりえなかったが、それでもこのとき朧は、この少女を泣かせるようなことはしまいと思い。その問いにうなずいた。

「そうだな、少しだけだが」
「そっかッ! じゃあ、お昼ごはんつくってきたのッ! 一緒に――ッ」

 その時だった。
 お花畑の向こうから、何かしらの気配を感じた。朧は少し眉根をゆがめ、そちらを向く。だが、何故か少女もそちらを向いていた。それもほぼ同時に。
 つまり、少女もその気配に気付いていたということなのだが、それに関しては追求しなかった。そんな暇では無いというのもあったし、また、少女に嫌われたく無いという感情も、確かにこのとき存在していた。

 お花畑の向こうから現れた存在。それは黒いカラスのような羽を持ったもの――堕天使たちだった。
 それを確認した少女は、まるで朧を護るように前に進み出る。

「『魔女』よ。探したぞ、今なら許してやる。早くかえるぞ」

 そう言う堕天使。朧は、その『魔女』という言葉に不審を抱く。
 確かに、この時期の人間界は魔女狩りというものが行われていた、が堕天使がそういうことをしているとは訊いたことが無かったからだ。

「私は、もう『あの場所』には戻りませんッ!」

 『あの場所』、とはどこかのことを言っているのかはわからないが、おそらくは堕天使たちの研究施設とか、そんなもののことだろう。
 その少女の返答に、顔をヒクつかせながらも、平静を装い、少女に詰め寄る堕天使たち。

「そんなことを言われても。お前の居場所はあそこだけだろう? さぁ、早く戻るぞ」

 連れの堕天使の一人が言う、が

「嫌ですッ!」

 それに顔を明らかに歪ませた堕天使たちは、少女の後ろにいた、朧に目をやり、ニヤリと笑った。その気配で察したか、少女を手を大きく広げ、叫ぶように言う。

「こ、この人は関係ないですッ!」
「そうか、だがお前が戻ってこないと、関係を持つことになるんだがな」
「ッ!」

 悔しそうに唇を噛み、修道服のスカートを強く握り締めて、ふっと手を離す。

「……分かりました。でも、この人は関係な――――」


「――関係ないとは、ひどいことを言うな」


「えっ!?」

 ハッと、顔を上げれば、隣にいる少女。その顔を見て、息が詰まるようで――

 ――やっぱり綺麗だな

「おいおい、女がこんなところで格好つけてんじゃねぇよ。さっさと、そいつを渡せ」
「それはご遠慮願おうか。私の大切な『友人』を、お前達のような存在に渡すわけにはいかない」
「そうか、それは残念だ」

 堕天使たちが、その手に光の槍を形成する。それ
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