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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十六話『新たな約束』
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問を躱そうとする上官……中国IS競技会・情報部管理課長官の態度に、楊は再び牽制を仕掛ける。
あくまで態度を崩さない楊に、長官も一呼吸を置いて楊を睨んできた。
〔……清周英教官に、どうやってあそこまでの裏を取ったかは、今は置いておこう。それよりも、君は中国IS競技会(われわれ)の同胞でありながら、分不相応にも共和党政府の直下機関に盾突く気かね?〕
長官の言葉は説教を超え、既に“脅し”の意が込められていた。
楊が自分の上官に送り付けたのは、試合後に拓海から渡された“清周英の不法行為の証拠と本人による罪状の告白”だった。
長官とて、清の不穏な動きについては承知していた。しかしそれを摘発して得られるものと、現状を天秤にかけ、彼をはじめ競技会は現状を維持する選択をした。
IS後進国だった中国にとって、清がもたらしたものはあまりに大きかった。
それゆえに、たとえ清が不穏な人材だったとしても、IS先進国に追い付くにはそれに目をつむったほうが、国の利益は安定するのである。
〔正義に燃えるのは構わないが、君ほどの若輩者が暴れた程度で、現状は覆らんさ〕
低く響く長官の声が、コンソールのインカムを通じて楊の鼓膜を震わせる。
証拠を挙げて自分たちに突き付けたところで、所詮は犬死にだと、多分に威圧を込めて。
ところが対する楊はまったく焦りも怯みも見せず、冷然とした表情を保っていた。
「長官、お忘れですか。我々、代表候補生管理官には、自国の不正に対する正義において、“最後の切り札”が残されていることを……」
楊が何を言いたいのか分からなかった長官だったが、寸の間を置いて目を大きく見開いた。
〔楊、貴様……!?〕
「既に準備は終えています。後はこれを、“世界IS委員会・監理部に提出する”だけです」
部下の返答に、してやられたと大いに痛嘆する思いだった。
代表候補生管理官には、自国の不正や不穏な動向に対し、その良心と正義をもって託れた最後の権限が存在する。
それが【不正管理告発権】である。
代表候補生管理官はただの出身国への連絡係ではなく、IS学園を通じて世界IS委員会の管理下にも属する特殊な立場にある。
普段の学園からすれば、いつどこで何を仕掛けてくるか分からない“不穏分子”ではある。だが同時に、派遣された国家が彼らに不穏な命令を下さないかを監視することで、その国家のISの管理体制を査定する材料ともなる。
そしてIS学園は彼らに、自国がISによって世界秩序や人道倫理を侵害する動きを見せていると知ったときに、それを世界IS委員会に告発し、調査を緊急要請できる権利を与えているのだ。
IS学園は世界IS委員会の管理機関であり、各国家のIS競技会よりも権限は数段強い。
たとえそれが名だたる先進国のような列強国家であっても、ひとたび沙汰が下されれば、
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