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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十五話『風光る』
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。あなたが起こしたこの現象は、一説には『単一仕様能力(ワンオフアビリティー)』の前段階とも推測されているものなのですよ?〕
楊がいつもの淡々とした調子で、説明を付け加えた。
楊の手元にある報告では、鈴が甲龍を受理して稼働させはじめたのは、今からちょうど四ヶ月前のことだ。その四ヶ月のあいだに、鈴は既に真性の深層同調稼働を発現し、さらにISのさらなる高み『二次移行(セカンドシフト)』への兆候を見せるという、稀に見る成長速度を見せている。
完成から数ヶ月でその領域にまでISを扱えたのは、それこそ現在Sクラス級に名を連ねる女傑たちであり、鈴の中に彼女たちに通じる才能が眠っていることを示しているのだ。
〔あなたには我ら中華人民の歴史の碑文に、その名を刻む資格を有している可能性があります。それを知るためにも、今回の試合はしっかりと報告させて頂きますので、そのように〕
最後まで淡々と話して締めくくると、冷静な管理官はそのまま通信を切ってしまった。
佇む鈴は、未だに呆然としている。
「何ぼさっとしてんだよ、すっとこどっこい」
「なっ……!?」
修夜の悪口に反応して、鈴は怒りを覚えると同時に正気に戻る。
「何をしょげてんのか知らないが、誰かから後ろ指さされると思っているなら……見ろよ」
その言葉に促され、怪訝に思いながらも、何があるのかと鈴は当たりを見回した。
そこには――

「すごかったよ、二人ともナイスファイト!」
「次やるときは、もっと楽しい試合にしてね〜!」
「2組の子、惜しかったよ、お疲れ〜!」

鈴が呆けている間に、アリーナのシェルターは解放されており、そこから観客たちが拍手と温かい声援を送っていた。

「この声を聞いて、それでもそう思ってんなら、正真正銘の馬鹿だぜ?」
皮肉っぽく笑う修夜の声を聞きながら、少女は目の前の光景に圧倒されていた。
地獄の訓練校時代、敗者に待っていたのは容赦のない冷笑と嘲りだけだった。
鈴も最初はうまくISを乗りこなせず、周りからの笑い物にされてきた。
それ以上に、いじめられっ子として辛酸を舐めさせられてきた日々の記憶が、彼女の根底で“見せ物”にされることへの恐怖となっていた。
だからこそ人が人を嘲るときの、あの鋭く冷たい視線の痛さを、誰よりも知っていた。
だからこそ、いま目の前にある光景が、何故か妙に、心に染みて仕方なかった。

「鈴!」

不意に、聞き覚えのある元気な声が、少女の耳に入ってくる。
振り向けばそこには、フェンスの手すりから身を乗り出す、織斑一夏の姿があった。
「惜しかったけど、すごかったぜ! 今度また、練習ででも思いっきりやろうぜ!」
一夏らしい、なんとも太平楽な声援だった。
屈託のない笑みで大きく手を振る幼馴染の姿に、鈴の中で何か込み上げてくるの
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