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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十五話『風光る』
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「黛さんの私物、ということは……」
少し眉間にしわを寄せつつ、拓海は黛に視線を向ける。
向けられた方は、自分の所業を見透かされたと感じ、ぎこちない態度になっていた。
「まぁ、そういじめてやるな。こやつがおったお陰で、面倒な段取りを省けそうじゃし」
白夜はそう言ってあいだを取りなし、拓海もそれに従って追求はしなかった。
「それで、肝心のこれの中身はなんです?」
「ま、簡潔に言えば、“鈴を(たぶら)かしておったうつけ者”の尻尾じゃよ」
これまた、妙な回答が飛んできた。
「この会場内で、ひと際気色の悪い気配を放っておる輩がいたんでな。そやつの気の向けている相手が鈴であったのと、その気配がより濃くなったのがあの拍子だったのでな」
普通に聞いていると、まるで内容の見えない話だが、育ての親の話し方から拓海は、アリーナ内に鈴の異変の元凶が潜んでいたこと、それを白夜が持ち前の“常識外れな第六感”で探り当てたということ、と理解した。
「つまりこれは、その尻尾さんの悪事が収められた証拠――というわけですか」
「そんなところじゃな。ついでに写真も何枚か、頂いておいたしのう」
飄々と答えつつ、白夜は重箱に残っていた出汁巻き卵に箸を付けていた。
「でもすごいですよねぇ、白夜さんがちょっと目力(めじから)を加えるだけで、なんでも喋っちゃうんですから。私もアレぐらいの目力があれば、もっとスマートにネタを掴めるかも……!」
「なら精進することじゃな、魅力的な女になりたいなら焦らぬことじゃよ」
白夜の仕様(しざま)を思い出して意気込む黛を見て、当の白夜は愉快そうに笑う。
(目力……)
拓海は黛の一言に心当たりがあった。
修夜曰く、白夜は瞳術(どうじゅつ)が使えるらしい。
瞳術とはいわば“眼力による魔法”であり、睨んだ相手に様々な作用を起こす力である。
有名なのは、ギリシャ神話のメデューサが使う“石化”であろうか。
とにかく、白夜の目に魅入られたものは、何の疑いもなく自分の秘密を明かしてしまうらしく、あるとき修夜が問いただしたところによれば、そういう術を使っていたというのだ。
「……先生、あまり奇抜な言動は慎んでくださいね。ここは並の世間とは違うんですから」
溜め息交じりに忠告する拓海に、白夜は杯を傾けながら「わかった」と軽く返した。
まるで反省のない態度だが、彼女が家族からの言葉は守る性分なのは理解しているため、拓海もそれ以上強く諌めるはしなかった。
「さて、この音声データと黛さんが撮ったという写真、どうしたものかな……」
拓海は思案げにボイスレコーダーを眺めながら、思索に(ふけ)りはじめた。
まだ何が収められているかは分からないが、少なくとも鈴の身に生きた出来事の、最後の一片を知る手掛かりなのは間違いない。
そしてこ
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