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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十四話『雲を裂いて』
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くる。

――くすくすくす……

笑い声である。
しかもそれは一カ所ではなく、会場のあちこちから、ちらほらと耳に入ってくる。
特に大きく笑いを噛み殺す声が、2組一同のすぐ後ろから聞こえてきた。
見ればセミロングの女子と、一本結びの女子が試合の現状を見ながら、何やら愉しげにしていたのだ。一本結びの方は胸のリボンの色から二年生であることが窺えた。
何か知っているのか。
「あの、すみません……!」
そう思ったときには、思わず外崎はその二人に声をかけていた。
「あの……、凰鈴音さんのこと、何か知っているんですか……!?」
不意に前の席から、しかも身を乗り出して質問が飛んできたことに、後ろの二人は思わず面食らった。
一瞬どちらも戸惑ったが、外崎の態度から何かを察したか、二年生の方が外崎に向き合う。
「私たち、あの二人と同じ中学校だったの。それで“あの二人”が対決するって聞いて、二人で来ちゃった訳なのよ」
「先輩と話してたの、『やっといつもの二人らしくなってきたなぁ〜』って」
訊いた一同は、困惑せざるを得なかった。
2組の中では歩く凶器という認識しかない人物が、実は至って普通の年頃の少女だというのだ。
しかも目の前で繰り広げられるくだらないケンカを、日常的にやっていたというではないか。
「ねぇ、今日はどっちが勝つと思う?」
「ん〜、真行寺君におやつの『チョコドーナッツ』!」
「ちょっと、真行寺君は私が『明日の学食で出汁巻き玉子』って、決めてたのに……!?」
「先輩の訊き方が悪かったですね、こういうのは早い者勝ちですよ〜?」
そのうえ二人は、この勝負を利用して賭け事にまで興じはじめる。
「こら、ISの試合を賭け事にするんじゃないの!」
カワハラはそれを不健全と感じて注意する。
しかし注意された二人は、目を丸くして叱られた意味をイマイチ理解できていなかった。
「いや、だって先生、それがあの二人のケンカ見物の醍醐味なんだもん」
「そうそう、うちの中学じゃ先生も交じって、あれで給食やおやつを賭けてましたから」
まったく悪びれる様子もなく、先輩後輩コンビはとんでもない事実を話してみせた。
そこまで“あの光景”が常態化し、しかも一種の娯楽と化していたなど、2組の一同は遠い外国の風習を聞かされいるようで、まったく想像がつかなかった。
そんな話を聞いているうちに、外崎の中で何かが渦を巻きはじめる。
(ねぇ、どっちなの。どっちが本物のあなたなの……?)
冷血な野蛮人か、年頃の女の子か。
もう外崎には、凰鈴音という少女が何者なのかが分からなくなっていた。
外崎がこの試合の見学を強く望んだのは、鈴の実力を知るためだった。
先日の一夏と鈴の試合は部外者の乱入で中断され、彼女自身も鈴に叩きのめされた恐怖からまだ立ち直れず、試
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