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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十三話『颯(はやて)』
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っさに展開してダメージを最小限に食い止めたのさ」
「な……なによ、それ……!?」
「ついでにとっさに煙幕弾も使って、過剰に煙を撒いておいて正解だった。お陰でこっちがやり過ごしているのがばれなかったうえに、気が緩んで元に戻るのも待てたからな」
よくよく考えれば、砲撃で煙が立つのは火の気のある物体が壊れるか、土煙によるものがほとんどである。雨が降りしきるこの場所で、あれほどの煙が立つのはむしろ不自然だ。
だが鈴は意識を深層へと落としたせいか、ただ修夜を倒すことに集中し過ぎ、状況を疑うための思考をも止めていた。
鬼の如き強さの源が、ここに来て裏目に出てしまったのだ。
(ほとんど、シルフィーの手柄なんだけどな)
修夜が全身の痛みに悶え、不可視の死の雨に晒される中、シルフィーは独自でユニットを動かし、さらに時間を稼ぐべく数発の煙幕弾をわざとその場で起爆させたのだ。おかげで修夜は体勢を立て直し、さらに策を弄する時間も得ることが出来たのだ。
すべてがとっさの判断でおこなわれ、その判断が功を奏して逆転の一手が生まれた。
総じて言えば、ほぼまぐれ当たりである。
しかし結果として、鈴の意識を深層域から引きずり出すことに成功した。
鈴のシールドエネルギー、残り109ポイント。
わずかに打ち込みが浅かったか、鈴がとっさに後ろに身を引いたのか、それともわざとか。本来なら一撃必殺を狙えただろう獅子の剛腕をして、鈴を仕留めるには至らなかった。
肝心の剛腕に腹を穿たれた当人は、青龍刀を杖にしてフラフラと起き上がっている。
「いい加減、小細工も飽きたろう。そろそろガチで来いよ」
鈴の切り札を“小細工”の一言で片付け、修夜は再び挑発をはじめる。
「うる……さい……!」
未だ腹に居座る鈍痛を堪えながら、必死に鈴は地面に直立しようとする。
「まさか、またさっきの小細工に頼る気か。いい加減諦めたらどうだ?」
「……っ、黙れ……!」
鈴が現状で修夜に勝つには、再び深層同調稼働を発動させるか、それこそまぐれでもないと無理だと、鈴はそう考えていた。
だがさっきから腹は痛むし、いつも以上に長く同調していた反動で酷い立ち眩みに襲われ、もう一度など無理なのも感じている。
でも勝たなければならない。
勝たなければ、自分に道はない。
「勝たなきゃ……、何もないっ……!」
「へぇ」
「あんたに勝って……、IS学園(ここ)で成功して……、全部……取り戻す……!」
「取り戻すって、何をだ?」
「うっさいっ……、全部よ、全部……!」
「はぁ?」
「お父さんとお母さんのことも……、お店も……、一夏の隣も……、楽しかった頃も……」
雨に打たれ、体は痛みと疲労で悲鳴を上げ、意識は今にも手綱を離しそうになる。
それでも、それでもなお――
「あの日に失くしたものは…
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