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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十三話『颯(はやて)』
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ある日、少女は母に尋ねた。
「何でお父さんと結婚したの?」
母親は都突な質問に、寸の間戸惑った。
だが少し気恥ずかしそうに笑いながら、
「料理をしているお父さんが大好きだからよ」
そんな風に答えた。
少女もそんな母に、
「あたしも料理してるお父さん、大好き!」
満面の笑みで答えを返すのだった。
いつまでも続くはずだったそんな光景。
あの日々の温かさをもう一度、もしもう一度得ることが出来るのなら……。
「お前が作った酢豚、楽しみにしてるな!」
あの約束を、今度こそ本当の意味で叶えるために……。
「勝ちなさい凰鈴音、それがあなたに残された最後に道です」
――勝つ。
――――
第一アリーナ、フィールド内。
徐々に雨足が強くなる中で、一組の少年と少女が向かい合っていた。
少年――真行寺修夜は、低空から雨の踊る地面で倒れ伏す少女――凰鈴音を見下ろしていた。
「立てよ、鈴」
どこか苛立ちを混じらせながら、修夜は短く言い放つ。
すると先ほどまで微動だにしなかった鈴が、濡れた体をゆったりと起こし、再び地面に立った。
両の手には二対の大刀、その腕を力無く下げ、顔も俯いている。
だが僅かばかり見え隠れする口元が、小さく何かを呟いていた。
「負けない、絶対負けない、勝つ、勝たなきゃ届かない、必ず勝つ……」
繋ぎっぱなしにしていた
開放回線
(
オープンチャンネル
)
から、修夜にもその小さな声は聞こえてきた。
「言いたいことがあるなら、はっきり言ったらどうだ?」
修夜の声に反応してか、ぼそぼそとした呟きは止み、雨音が静寂を埋めていく。
地上に立つ、まるで抜け殻のような少女の影。
眉間にしわを寄せながらも、修夜はただじっと鈴を睨み続ける。
そんな鈴の変化にいち早く気が付いたのは、戦いを外側から見ていたものだった。
〔聞こえるか、修夜。すぐに鈴との距離を取るんだ!〕
いつもは冷静な拓海が、焦りを隠さずに
秘匿回線
(
プライベート・チャンネル
)
で修夜に話しかけてきた。
先ほどまで鈴の変化に関して考えていたBモニタールームと観客席の一同だったが、試合が大きく動いたことでまた試合展開に集中するよう努め出したところだった。
その矢先でのことである。
《拓海、どうしたの?》
血相を欠いた自身の開発者に、電子の妖精が質問を返す。
〔鈴と甲龍の
同調
(
シンクロ
)
率が、急激に上昇しているんだ……!〕
《え?》
〔シルフィー、
分析機能
(
アナライズ・スキル
)
で
透視
(
スキャニング
)
してみるんだ〕
言われてシルフィーは、半信半疑で鈴と甲龍の分析を開始する。
《え、ウソ……でしょ……!?
深化度二十……、三十……、ご…五十……!?》
ISの代弁者たる妖精をして、それは驚嘆に値する現象だった。
《なに
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