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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十二話『電(いなずま)』
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妻の円満ぶりは目に見えるものだった。
常に二人で店を切り盛りし、店は常に地元の学生と常連客で賑わって繁盛し、店内も夫妻にも笑顔が絶えない素敵な店だった。
だから、まず夫妻が店を閉めて本省に帰省するということが信じられず、一夏から聞いたときには悪い冗談にしか聞こえなかった。
さらに楊の話では、店主の方は日本に留まるも、その後の消息は不明。夫人の方は本省に鈴を連れて帰省後、地元の量販店でパートタイムの勤務をはじめたのだという。
「それから間もなくですね、凰候補生が養成所に入学したのは」
そう言って次に発した楊の言葉が、さらなる波紋を呼んだ。
「当局の推薦から二年以上ですから、時期としてはかなり遅かったですが……」
「……二年?」
千冬の意識が、困惑から再び疑念へと変わった。
「はい、凰候補生のご両親には強く入学を
薦
(
すす
)
めていましたが、父親の方が頑として首を縦に振りませんでしたから」
――IS操縦者としての推薦は、栄光への約束手形。
ISが時代の
寵児
(
ちょうじ
)
される現代において、IS操縦者としての遍歴は何にも勝るステータスであり、一種のエリート扱いが陰ながらに幅を利かせていた。
有益な検定資格よりも、IS操縦者としての経歴が勝るという現象が、この御時世には暗黙の了解として成り立っているのだ。
それが国家からの推薦ならば、なおのこと断る理由がない。それが普通の考えである。
(それを二年も……)
鈴の父親に如何様な意思があったかは分からない。
鈴がISに乗るのを好しとせず、そこから鈴を遠ざけていたか。もしくは本省からの推薦に思うところがあり、避けていたか。
いずれにせよ、そこまで頑なだった鈴の父親もそうだが、中国IS協会の執拗とも言い得る粘り強い勧誘も相当である。
「随分と熱心にご勧誘なさったんですねぇ……」
少し場違いなどこかのんびりとした口調で、二人のあいだにいた真耶が話に加わる。
「なにせ、十三歳で適性ランクAの逸材ですからね。本省側としても、早期から育成したかったのだと思います」
楊の語った事実に、真耶は思わず目を丸くして驚いた。
ISの特性はSからEまでの六段階の評価が存在し、その肉体がISの操縦にどれだけ適しているかを知る指標になっている。
しかし、すべての女性が操縦する権利を持っているとはいえ、実態は大半の女性がEランク(適性不足)、もしくはDランク(低適性)に分類され、操縦者としての道を諦めることを余儀なくされる。
訓練や精神的な成長によって向上はするものの、それでもAランク以上の適性者に育つ者は、全体の数パーセントしか存在しない。
Sランクにもなると、世界的な操縦者など一パーセントにも満たない領域であり、その希少性はなおのこと際立ってくる。
先天的なAランクともなれば、もはや数万人
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