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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十話『泣きだしそうな空の下で』
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らしい……)
心中で悪態をつきつつも、千冬も黙って画面に映るフィールドを見つめ続ける。
室内を徐々に、重苦しい雰囲気が支配しはじめる。それに対して真耶のほうは、二人のあいだにある剣呑なものを察知しつつも、対処法が分からずうろたえていた。
「……一ついいですか、楊管理官?」
少しの沈黙ののち、先に口を開いたのは千冬のほうだった。
「なんでしょう?」
それに対して、楊は変わらず事務的に返答する。
「凰の本国帰還中のことは、どこまでご存知で……?」
弟の幼馴染で、自分との縁の深い少女。勝ち気で強気、己を押し通すことでは年上の自分に食い下がるほど頑固だが、そのくせ打たれ弱く気が小さい。そして人の目をよく気にし、よく観察する繊細さと、そこから来る優しさもあった。
ところが一夏や修夜から聞いた帰国後の鈴は、以前の“我の強さ”が増幅されて逆に繊細さに欠けた、粗野な人間になっていた。
千冬もまた、鈴の変貌ぶりが気にかかっていたのだ。
「……それは、今ここで知るべきことなのですか?」
「質問を質問で返さないでいただきたい、どうなのです?」
とぼけて逃げようとした楊を、千冬はすかさず鋭い眼差しで牽制する。これには鉄面皮を装っていた楊も、一瞬だが眉をひそめた。
こういうときの千冬の眼光は、拳銃での威嚇射撃よりも強い効果を発揮する。
「……本国での凰鈴音の動向を、直接には見ていません」
しぶる様子を見せながらも、あくまで冷静でいようとする楊。
「我々管理官のもとには、“報告書”というかたちで、学園に入学した候補生たちのデータが転送されてきます。ですので、その仔細な経緯までは把握できていません」
淡々と語る楊を、千冬はまだその視線で釘付けにする。
『吐けるものは全部吐け』――、無言の圧力がまだ楊へと向けられている。
楊も管理官としての意地があるのか、たやすくそれには屈しない。
互いに顔を画面に向けたままだが、あいだで二人を見ている真耶からすれば、横目で交差する視線に鋭い刃がついているように思えた。二つの刃が鍔競り合っているように見えて、真耶は不安と息苦しさで身を縮めていく。
部屋の空気は徐々に、静電気のようなものを帯びはじめていた。
(誰か、助けてください……)
泣きべそをかきそうになりながら、真耶はただ雷雲の立ちこめるモニタールームで、余計な雷に当たらないよう身を低くするのであった。
――――
元をただせば、事件後の保健室での会話から、今回の試合は成立した。
もっといえば、無人機が攻め入ってきた折に、鈴が取り付けた約束が発端であった。
その場にいた一夏は、鈴が神妙な顔で切りだしたその話題に、真っ先に反応した。もちろんこの少年の場合、これを疑問視する方向でだが。
仲間との平穏を好む一夏にとって、よく知る二人が意地でいが
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