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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十話『泣きだしそうな空の下で』
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襲撃事件から数日後の、第二アリーナとは学び舎を挟んで線対称の位置にある“第一アリーナ”に、見慣れた顔が並んでいた。
フィールドにはエアリオルをまとった真行寺修夜と、甲龍(シェンロン)をまとった凰鈴音の二人。
観客席の最前列には、修夜のクラスメイトである織斑一夏をはじめとしたいつものメンバーと、一週間前に鈴によってその座から引きずり下ろされた元クラス代表の少女、彼女に付き添う2組の担任の女性教師、そして無関係な観戦客がちらほらと。
Aモニタールームには、織斑千冬と山田真耶の一組の担当教師が二人。そしてもう一人、エッジの眼鏡に黒いスーツで身を固めたキャリアウーマン風の女性の姿があった。
「珍しいですね、(ヤン)候補生管理官。わざわざこちらにお越しになるとは……」
楊麗々(ヤン・レイレイ)、中国の代表候補生たちと本国を繋ぐ『候補生管理官』である。
候補生管理官とは、各国の代表候補生たちの動向を観察・報告し、本国と候補生たちの意思を中継し、ときに出身国の代弁者として、ときに候補生の相談者として働く者たちである。
いわば候補生たちのマネージャーであり監察官でもあり、候補生とはまた違う国家からの使者であり、生徒と学園関係者に次ぐ“第三の立場”に立つ役職なのだ。
ゆえに、彼らには専用の宿泊施設が用意され、同時に学園内で不審な行動を起こさないよう、厳しい監視体制も敷かれている。
「先日では完遂できなかった、男性操縦者との貴重な戦闘データの回収ですから」
抑揚なく事務的に話す楊。その視線の先は、千冬ではなく画面の向こうを捉えていた。
管理官たちのもう一つの仕事、それが【他国の代表候補生との戦闘データの回収】である。
IS学園は世界大会(モンド・グロッソ)を除けば、他国のISと大手を振って戦闘ができる唯一の場所でもある。国家間の共同軍事演習でも可能ではあるが、そこには少なからず政治的な思惑が絡み、IS対ISの戦闘も戦術・戦略が重視されて不完全燃焼で終わりがちである。
だが、IS学園にはそれが無い。むしろ『訓練』や『試合』いったかたちで、外界では不可能な回数の戦闘を経験できる。
そのたびに操縦者たちは全力でぶつかり合い、皆で切磋琢磨することで共に高みへと上っていく。その過程で得られる膨大なデータは、国家側にとっては一等の価値がある“情報の鉱脈”なのだ。
欲しがられる情報とは、貴重かつ希少なほど競争率が高く、新鮮かつ正確なほど力を持つものである。
今回、鈴が短期間に世界に二人の男性操縦者と試合ができたことは、中国側からしてみれば他国を出し抜く千載一遇の好機なのだ。
「しかし幸運でした。凰鈴音が男性操縦者の二人と、そしてあなたとも旧知いうことは」
表情には出さないが、楊が自分の優位性を少しばかり自慢しているのを、千冬は察した。
(わざと
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