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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第二十九話『台風の目の中で』
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ら千冬姉と二人暮らしで、箒や鈴といった女の子たちと接する機会も多かったから、大したことはないと思っていた。
でもいざ来て見て、その肩のこり方は半端じゃなかった。
四六時中どこからか視線を感じるし、一歩間違えれば女の子たちの“恥ずかしい現場”にそこら中で出くわすし、トイレやその他生活もろもろの“男の悩み”みたいのが生まれてくるし、もうだいぶ家にも帰れてないし……。
「ほんの一ヶ月ぐらい前までの生活からしたらさ、だいぶ変わったよな、俺たちの生活……。もちろん、千冬姉に追い付けるかもしれないっていうのは嬉しいし、そんな機会がここにあるのはラッキーだと思う」
本当に、俺はラッキーだったのかもしれない。
でももう、自分だけじゃ後戻りができない場所にいることに、今さら気がついた。
「今さらだけどさ、もう“ただの男の子”には戻れないっていうか、戻らせてくれないんだなって思ってさ……」
なんか支離滅裂だな、俺……。考えが上手くまとまらない……。
みんなに迷惑をかけたヤツには腹が立つ。でもそいつを捕まえようとすると、ISや俺と修夜に変なしわ寄せが来る。そもそも俺と修夜には、自分の意思で決められることが極端に狭くさせられている。
じゃあ俺と修夜って、結局は何なんだよ――。

「なぁ、一夏はどうなりたい?」

修夜が、唐突にそんなことを聞いてきた。
突然のことに、俺の思考が止まる。
「お前は、千冬さんを超えたいって目標があるんだろ。ならやることは一つじゃないのか?」
たしかに、俺はそう決めた。俺にとって千冬姉は、大切な家族で、憧れのヒーローで、目標だ。
だから千冬姉に対して俺ができる恩返しは、千冬姉を安心させることだと思った。
だからこそ、千冬姉より強く立派になって、もう千冬姉だけで頑張らなくていいって、そう大見得切って言えるようになりたかった。
「俺は飛ぶぜ、あの蒼穹(そら)を越えて、その宇宙(さき)へ。たとえ誰に何を言われようと、どう利用されようと、どんな困難や災難に遭ってもだ。それが【俺の夢】だからな」
とてもまっすぐで力強い、修夜らしい言葉だった。
俺に、そんなまっすぐな言葉は言えるだろうか。そんなに強い決意ができるだろうか。
ときどき、修夜のこの“強さ”が羨ましくなるときがある。
どうすれば、こんな“しっかりとした自分”を得られるのだろう。
俺にもそれがあれば、きっと俺の夢にも、もっと早く届く気がする……。
そう思っていたときだった。
「とりあえずさ、今回のことで何か劇的に変わることはないよ。それは確かだと思う」
拓海が、いつもの優しい調子で話をはじめた。
「今回の事件の犯人を、追わないとは言ってないさ。ただ“世間とは違う場所で物事が進む”って話だよ。だからここから先は、そこに関わる人たちに任せるしかない。

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