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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第二十八話『鉄鋼砕く風獅子の牙』
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が見せる、戦うことへの異様な執着。それはもうプログラムの域を超え、一種の“狂気”にさえ思えてくる。
どうにか振り払おうとブースターを吹かすも、無人機は半身を失ったとは思えない馬力で、修夜の足をがっちりとつかんで離そうとしない。
《右脚部、ダメージ蓄積中!!
ウソでしょ、ブラストの装甲に握力で勝つの……!?》
格闘に特化したエアリオル=ブラストの装甲は、かなりの衝撃や力に耐えられるように設計されている。雑多な攻撃では傷付けることも難しい、まさに西洋の甲冑のそれである。
だが無人機の手は、剛健な“獅子の鎧”を、その握撃だけで潰しにかかる。
もしくは、もはや力のコントロールに支障をきたしているのか……。
《ダメージレベル
注意域
(
イエロー
)
、マスター、何か攻撃して!!》
「言われなくても……!!」
このままでは、足をその握撃でもがれてしまう。
一刻も早く、その腕を外し、とどめを刺しに行きたくはある。
だが、修夜もブラストの武装を完全には把握しておらず、さらに予想外に逼迫した状況に、判断が鈍ってしまっているのだ。
その中でひねり出す、修夜の回答は――
「シルフィー、『
輻射波動式パイルバンカー
(
クラッシュアーム
)
』だっ!!」
《え……ちょっと、マスター無茶だって!?》
「無茶も無謀も承知の上だ、こうなれば一撃で沈めるぞ!!」
四の五の言ってはいられない。決意する修夜に対し、シルフィーは慎重になることを促す。
そこに突然、アラート音が鳴り響く。
見れば、無人機は赤い目を炯々と光らせ、そこからビームを放とうとしていた。
――まずい、やられる。
「修夜を、離しやがれぇぇぇえっ!!」
大声とともに、空から弾丸が降り注いだ。
それは修夜の目の前で、白亜のエネルギーをまとった拳を打ちおろし、今まさにビーム放とうとした機械の怪物の頭を微塵に粉砕する。
その衝撃で修夜の足の呪縛は緩み、機を逃すことなく修夜はそれを振りほどく。
「ナイス、一夏!! シルフィー!」
《今度こそオーケーだよ、マスター!》
修夜はすぐさま、『クラッシュアーム』を
呼び出し
(
コール
)
、右腕に装着させる。
鋭い鉄の杭が付き出た箱型の物体。
鉄の杭は直径六センチメートル、長さは隠れた部分を見越しても四十センチメートルはある。
「今度こそ……、ゲームオーバーだぁぁあっ!!」
正拳突きの要領で構えた修夜は、頭を失って怯む黒い巨体に近付き、華奢などてっ腹に叩きこむ。
耳をつんざく、火薬の強烈な炸裂音。
音と主に打ち出された鉄の杭が、無人機の胴体を無慈悲に貫いた。
貫いた杭は、突撃槍と同じ原理で破壊のエネルギーを無人機の体内に一気に流し込み、胴体を爆発させ断絶せしめる。
修夜の時間が、無意味にスローモーションとなって過ぎていく。
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