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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第二十七話『八千年之神狐(やちとせのみこ)』
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攻撃を避けて退いた“次の瞬間”だった。
「だから、あえてロックオン式の射撃で、ヤツを回避に専念させる。
 そこに格闘攻撃での追い打ちがあればベストだ、ヤツはさらに回避に躍起になるだろう」
これも痛打の通った状況を振り返れば、おのずと見えてきた答えである。
「そこで、だ。箒、セシリア、鈴の三人でヤツを出来るだけ引き付ける……。
 その隙を狙って、一夏が零落白夜でバリアーごと叩き斬るぐらいの攻撃を与え、最後に俺がバリアーの外れたところを“ブラストの切り札”でヤツを粉砕する……!」
それに対し、唐突に異論を挟んできたものがいた。
「……待ちなさいよ、何であたしまで付き合うのが前提になっているのよ?!」
先頃、白夜になじられたことから立ち直ったらしい鈴が、ここでも“(われ)(かん)せず”と主張した。
「師匠が言っていただろ、“お前も一緒だ”ってな。意地でも引っぱって行くぞ?」
「だから、どうして誰かに指図されなきゃ――」
「俺は師匠に言ったよな、“説教ならあとでも出来る”って。あれは師匠なりの叱咤だ。
 あんなもん、俺からすれば『愛の鞭』でも一番ぬるい方だよ」
会話から外れている三人は、白夜のあの狂気混じりなテンションで“ぬるい”と言いきった修夜を見て、普段がどんなレベルなのか、想像するのも恐ろしくなった。
「それに知らないワケじゃないぞ。お前が師匠に、俺や拓海の次ぐらい可愛がってもらっているのは……」
その事実に、一夏と箒は思わず鈴を注視する。
鈴はそれを指摘され、明らかに動揺した。
「アンタ……、どうして……それ……!?」
「一夏もいないのに、師匠の鍼灸院によく顔出して、色々話しているのを見ればな……」
白夜は、修夜たちを養うために、最近まで鍼灸・整体の診療所を開いており、地元でも評判であった。
白夜自身は、知人の伝手を使えば衣食住に困ることなどないが、修夜たちの世間体を考慮した結果、得意の鍼灸と整体を使えばいいだろうと結論付けた。
結果として院は繁盛し、地元では名の知れた診療所として、また老人たちを中心として周辺住民の憩いの場の一つとなった。
その人の群れの影に、ときおり鈴の姿があった。
「“何をしに来てたか”までは知らないが、師匠が珍しく親身になってたからな」
修夜の記憶では、人の波が去る夕方五時前後に、鈴がよく訪れていたと、白夜からこっそりと聞かせてもらっていた。だがそれ以上のことは、修夜に対しても頑なに秘密を通した。
「お前、せっかくの師匠の親切心まで、ここで裏切る気か……?」
その静かな問いに、鈴の顔は今までにないほど、はっきりと戸惑いの色を浮かべた。
二人のあいだに何があるか、修夜にはまるで見当がつかない。
それでも鈴には、さっきの叱咤と今の修夜の一言に、何か響くものがあったらしい。

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