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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第二十六話『総力結集、少女たちの戦い』
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第二アリーナ・Aモニタールーム――

赤く暗い空間内で、強烈な速さでキーボードを叩く音がこだましていた。
「システム奪還率、六十三.二パーセント突破……!」
「よーし、良い子だ。大人しくしておいてくれよぉ……」
拓海と真耶のタッグが、外部からのハッキングに対して抵抗し、さらにそこからシステムの権限を猛スピードで奪還しにかかっていた。
(まったく、恐ろしいヤツだ……)
千冬は画面に映る修夜たちの戦いの動向を見つつも、拓海の常人離れしたプログラミングの才能と技量に、内心で驚くばかりだった。

――よくそんなに早く打てるな……?
――へへ〜ん、こればっかりは“ちーちゃん”でも無理でしょ〜?

思わず、自分の知る“天衣無縫の鬼才”と、その面影が重なって見えた。
(拓海、やはりお前も追っているのか、あの能天気の往き着いた“彼岸”を……?)

――ちーちゃんって、ホント“ぶらこん”なんだから〜。
――貴様が言えた義理か、この“妹好き”っ……!
――ふぎゃぁっ、な……なんで叩くの〜!?

(……いかん、余計なことまで思い出してしまった)
少々、思い出したくなかった記憶まで掘り起こしてしまい、しくじった気分になる千冬。
だがその余計な思い出は、千冬の中で燻る何かに触れ、徐々に焦れはじめる。
(……言われなくても、自覚はあるさ)
がんじがらめにする気はなかった。
単純に、自分と同じ道と同じ夢を追っていることが、微笑ましく、そして嬉しかった。
だから自分の出来得る導き方を、公私を混同しないよう、出過ぎぬほどに示してみせた。
しかしながら、拓海に突かれて気が付いた、自分の中の“影”。
長く離れた三年の月日の中で、弟とその幼馴染たちは、ずいぶんと逞しくなっていた。
そして大人っぽくなり、生意気にも自分なりの指針を持ちはじめていた。
そこにふと、去来したもの――

……もう自分の役目は、終わりはじめているのではないか?

そんな何とも言えない思いが、急に自分の内側で首をもたげてきた。
それを“気のせい”にして、“いつもの自分”に切り換え、前を向いていたつもりだった。
その“つもり”が、自分に大きな影を創っていた……。
(言えない……。言ってしまえば、きっと私は……)
心の奥に弱音を吐き出し、同時に少し呼吸を整え、彼女はまた“教師・織斑千冬”に戻る。
画面の向こうでは、大切な弟と、弟同様に大切な年下の幼馴染たちが、未知の敵を相手に必死の抵抗を見せている。
自分のそばでは、自分の影を浮き彫りにした少年と、自分の後輩が、このアリーナで起きている窮地のために、データ上で未知の敵と戦っている。
待つことしか、祈ることしかできない身の上に、彼女は“再び”心の中で歯噛みした。
「生きて帰ってこい、みんな……」
いつ
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