1:酒場にて
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その声は乾いており、途切れ途切れに言葉が続く。
「二人共、じゃあ今度は……これもまだ殆ど知られてないが……《死神事件》って噂は、知ってるか……?」
その物騒な名前に再び軽い寒気を抱きながら、俺は「いや……」と答える。エギルもイスに身を沈め、同時に深く溜息をつきながら首を横に振った。それを見たクラインは、気を持ち直すようにバンダナをギュッと締め直した。
「……だろーな。最後のユニコーン発見の噂もまだ数十人と知らないネタだが、死神事件っつーのは、その尾ヒレでついてきやがった、知る人ぞ知る……怪事件の噂だ」
それからクラインは声色を変えず、淡々と俺達に詳細を告げた。
《死神事件》。
それはつい先日、第一階層《はじまりの街》にて、ミストユニコーン最後の一体を発見したと自称する、とあるギルドパーティーの一団が逃げ込んできたのが事の発端だという。
彼らは最前線攻略にも参加する歴戦の戦士達だったにも関わらず酷く傷ついており、パニック状態に陥っていたが、街の宿で保護されているうちに少しずつ何が起こったか、彼らを保護した者や他のギルド員に断片的に話し始めた。
彼らの話を要約すると――幻のミストユニコーンを発見した直後のことだ。まるで、死神のような……漆黒のマントとフードで顔と姿を隠し、恐ろしい程に長大な鎌を手にした謎のプレイヤーがいきなり襲い掛かってきたのだそうだ。不意打ちで大勢が痛手を受けたが、数で圧倒的に勝る此方が体勢をどうにか立て直し、やがて謎の襲撃者のHPバーを半分近くまで追い詰めるまでに戦局を変えることに成功していた。これで相手を退けることが出来ると思っていたのだが、死神装束が武器を構え直したかと思うと――見た事も無いほどの激しいステータス上昇エフェクトを迸らせながら、HPバーまでもが見る見るうちに右端まで全回復したという。そしてパーティー全員を瞬く間に圧倒し、彼らは逃げ回る中なんとか全員が転移結晶でワープする事に成功。それから命からがらホームタウンがある第一階層まで遥々逃げてきたのだ――と話した。
その後も似た事件が続いたそうだ。今度は突如、とある街の一角に《回廊結晶》によるものと思われる光の渦が出現し、そこから同じく傷付き逃げてきた戦士達が出てきたという。またある時は《軍》の本拠地である《黒鉄宮》前に同じ物と思われる光の渦が出現、瀕死に加え麻痺状態にまでなっていた犯罪者プレイヤーが次々と吐き出され、軍によってそのまま捕縛、投獄された。
その者全員が口を揃えて死神装束の姿を目にしていた事などの情報から、犯人は『ミストユニコーンの恩恵を独占しようと企む、習得者が既に居ない筈だったエクストラスキル《大鎌》を操る犯罪者プレイヤー』と断定。その大鎌使いはその風貌からそのまま《死神》と呼称され、その危険性から《
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