1:酒場にて
[3/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
もベータの頃、リアルで公式サイトのレアモンスター紹介ページで見た事があるよ」
当時、無我夢中でプレイしていたベータテストの緊急サーバメンテナンス告知の後、強制的にログアウトを余儀なくさせられ、手慰みにパソコンで公式サイトの巡回に湿気込んでいた時のことである。なんのとなしにマウスホイールを回しながらモンスターの画像を流し見していて、幻想的な白馬の画像でピタリと中指が止まった記憶がある。皆が思い浮かべるユニコーンの想像図の通り、一本角を有した純白の仔馬をした外見の他に、赤い目を持ち、ミスト――《霧》の名を冠するに相応しい、薄く霧が立ち込めているかのような神秘的な鬣が印象的だった。説明文に『討伐するとドロップする《ユニコーンの蹄》《ユニコーンの鬣》は神秘の力を秘めた強力な武具の素材となる』というそのレアリティ成分たっぷりな一文を読んだ時は胸が高鳴らなかったといえば嘘になるが、まだテストということもあり「出会えたらラッキーだな」と流しながら再びシークバーを滑らせたのも、かろうじで脳味噌の端っこに記憶されている。
「それだけじゃないぜ。サイトにも載ってなかった詳しい情報も、信頼できるスジから大方揃えた。コイツを見てくれ」
料理を脇にどけ、なんとか出来たスペースにクラインはウィンドウを飛び出してそこに羊皮紙のロールをオブジェクト化して広げた。そこにはユニコーンのデータらしき文章が、何とも彼らしい荒々しい筆致で羅列していた。
「へぇ……アルゴリズムとかは《ラグー・ラビット》に少し似てるな。体力もそう高くないし、敵を察知し次第逃げ出すタイプの非好戦的モンスターか。流石にラビット程じゃないが、馬型だし逃走速度も速い。……でもSAOが開始してからもう2年だ。いくら討伐が難しいからって、流石にもうとっくに狩り尽くされたんじゃないか? 噂は噂だ、発見もただのガセネタってだけの可能性もある」
「ところがどっこい。ここに今までの討伐記録があるから、その数を良く数えておくんな」
即座に反論したクラインがトントンと羊皮紙の端を指先で叩く。俺はその指先の指し示す、記録の行数を数えてみる。
1……3、4……7、8……9。 もう一度数えてみる。 ……が、やはり9だ。
「……一頭、足りない?」
「そうだ。SAO開始後、ある程度のペースでユニコーンの発見と討伐が繰り返されたが、最後の一頭だけは長い間、発見さえされなかった」
肉コースの料理だが、律儀にも脇役であるサラダにドレッシングをかけていたエギルが頷く。
「そもそも、今の最前線が七十層程度で十体中九体まで討伐できたこと自体がかなりの幸運なんだよな。そんでもって、とうとう最後の一頭の発見と来た。こりゃ何かの思し召し……なのかも知れねぇな」
「どういうことだ?
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ