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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第二十二話『震撼、第二アリーナ』
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数十分前、第二アリーナ周辺――

一夏と鈴が熱戦を繰り広げはじめた頃、アリーナに向かって走る女子生徒の影があった。
「も〜う、なんで忘れものなんてするのよ〜!?」
「だからゴメンってばぁ……」
黒髪の生徒は、忘れものをして教室に引き返す原因をつくった友人を咎め、茶髪の生徒は、黒髪の友人のあとを息を切らせて追いかけていた。
「これじゃ、立ち見決定じゃない。
 せっかくのウワサの男子とウワサの転校生の対戦だっていうのに……!」
本当は、早めに到着して席をゲットしておきたかった。しかし急に任された日直、友人の忘れもの、先生からの手伝いの押し付け……。相次ぐトラブルに見舞われ、結局こんな時間までずれ込んでしまった。
「ほら、もうすぐなんだから、頑張りなさ――」
アリーナの玄関口が見えたところで振り返ると、いるはずの友人の姿が忽然と消えていた。
足を止めてみ回すと、息を切らしていた本人は近くに植えられた並木のそばでしゃがんでいた。
「アンタ、そんなところで何を――!」
カッと来て怒ろうとしたとそのとき、しゃがんでいた友人が急に振り返ってきた。
「見て、見てみて、チョ〜〜〜カワイイッ!!」
茶髪の生徒は、その腕の中にピンク色の丸い物体を抱えていた。
上部からはウサギの耳が生え、目と鼻とヒゲらしきものが正面についていた。大きさは直径三十センチメートルほどで、目と耳の内側は赤、鼻は紫をしている。ゴムボールのようにむちむちとした感触が、見た目と抱えている友人の様子から理解できた。
『PipoPipo, PapoPapo ♪』
軽快で小気味の良い電子音を鳴らし、謎物体はさも機嫌のよう誘うな感じだ。
「なんのよ、それ……?」
「さっきここで、もそもそ動いているのを見つけたの〜!」
茶髪の生徒は、謎の“ウサギボール”を抱えて悦に入っていた。
「……あのね、もう試合は始まってるのよ。こんなところで道草食って、謎物体なんか拾ってる暇なんてないのよ」
友人の行動に呆れながら、とにかくまたとないISバトルを拝もうと、黒髪女子は友人をたしなめようとする。
「でも、かわいいじゃ〜ん……」
それに対して茶髪女子は、悪びれる様子もなく、まるで拾った捨て猫を飼おうとダダをこねる子供のようにむくれていた。
すると――

『ダイニ アリーナ イキタイ。バショ ハ ドコ?』

ウサギボールは彼女たちの前に中空電子画面(マルチモニター)を映し出し、自らの意思を伝え始めた。
「すご〜いっ、新しいぬいぐるみロボットかな〜?」
のんきに感動する友人を尻目に、黒髪女子は段々とウサギボールに疑念を覚えはじめた。
「仮にそうだったとして、そんな高そうなもの、誰が持ってきたのよ……?」
IS学園が隔離空間とはいえ、テレビもネットも新聞も普及している。

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