暁 〜小説投稿サイト〜
IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
幕間『過ぎ去りし過去の記憶』
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 下手に動けば、学園全体に迷惑もかかるだろうし」
「ああ、そうだな」
拓海の言葉に、俺は頷きながら答える。
現状では、まだ俺や一夏と言った個人に関わる範囲で済んでいるが、下手に動けば、個人が中国政府を相手にしかねない事態にまで発展する。
そうなれば、鈴自身がどうなるのか見当も付かないし、俺だってそんな事態はご免被る。
「まぁ、なんにせよ助かった。正直、あまり他の奴とかに相談できる事じゃなかったからさ」
「別に良いよ。僕と君の仲だしね。
 それよりさ、修夜……」
「ん?」
拓海は真剣な表情をして、俺を呼ぶ。
「……その時、君に何かあったのかい?」
「何の事だよ?」
拓海の突然の疑問に、俺は少し笑いながら答える。
「いや、気のせいならいいんだ。なんとなく、話をしている君の表情が、辛そうに見えたから」
「大丈夫だって。まぁ、鈴の事でちっと疲れちゃいるが、その程度でへこたれやしねぇよ」
「ま、そりゃそうだね」
俺の言葉に、拓海もつられて微笑む。
「ただ、今はクラス対抗戦に向けて、一夏の特訓中なんだから、無理だけはしないでよ?」
「分かってるって。それじゃ、そろそろ部屋に戻るわ」
時間を見れば、夜の9時……8時から来て、報告したりなんだりしてたから、結構時間が経っちまったんだな。
「そうだね。ここにいて、千冬さんの雷は勘弁だしね」
「まぁな。それじゃ、お休み」
「うん、お休み。修夜」
互いに挨拶を交わして、俺は拓海の部屋を出て、自室に向かって行くのだった。

――――

「……相変わらず、嘘が下手だね。修夜」
修夜が出て行った扉を見つめて、ポツリと呟く拓海。
「君が辛そうな表情をする時は、必ず『あの事』を思い出す時だって、自分でも気付いているだろうに……。
 僕に心配をかけたくないからって、空元気しちゃってさ」
溜息を吐きつつ、拓海は椅子にもたれ掛かる。静かな自室が、今は何故か悲しい雰囲気を思わせる。
「あれからもう、どれくらいの時が経つんでしょうね……」
自分以外がいない空間の中で、誰かに問いかけるように拓海は呟く。
「あなたや皆が、僕達の前からいなくなってから、本当に色々ありましたよ。だけど、あいつはまだ、縛られたままです。
 あの時の『後悔』と、自身の『苦悩』に……」
表情には出さず、されど彼の雰囲気だけで分かるのは、共に過ごした時間の長さ故か……。
「今のあなたが、あいつを見たら……どう思いますか?
 怒るのか、悲しむのか、それとも……微笑んで、彼を慰めてくれるのか……」
自嘲とも苦笑とも取れるような表情を浮かべる拓海。
「あなたは、どうするんですか……?」
その表情は、普段の彼とも違い、蒼羽技研の主任を任されている天才の表情とも違う……。
「――師匠(せんせい)……」
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