暁 〜小説投稿サイト〜
IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第二十話『夜風の非常階段にて』
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部屋を与えられていた。
しかも不用心にも、扉は開けっぱなしで、中はほぼもぬけの殻だった。
さらに、部屋の隣人はまだヤツが帰って来た気配がないと言い、行方も分からないと首を横に振った。
つまりあの馬鹿は、現在進行形でこの寮内のどこかでいじけているらしい。
一応、バッグは部屋に放り込んでおき、カードキーを隣人に預けてヤツの部屋の鍵を閉め、こうして俺は現在もあの馬鹿を捜索中だ。
時刻は、午後9時半前。
完全消灯時間まで、あと30分と迫っている。
コイツを過ぎて動いていると、もれなく寮長からの説教と原稿用紙4枚分の反省文が待っている。
「こうなりゃ見つけ次第に、一夏と一緒に千冬さんの前に引きずり出して、互いに謝らせてやる……!」
……と愚痴るものの、さっきから一夏と俺の部屋のある階周辺を中心に探すも、一向に見つかる気配なし。
定番でトイレ……というのも考え、恐るおそる様子を伺って入ってみるも、人の気配は無かった。
水を浴びせたのもあるから、タオルを借りに大浴場や大型シャワールームに行った可能性も当たってみた。
しかし、コレもはずれ。
アイツが落ち込んだときに行きそうな場所の定番……。そう考えながら、気がつけば自分の部屋の前に戻っていた。
そのときだった、中学時代にアイツがひどくからかわれときに、よく半ベソをかいていた場所を思い出したのは。
何かきっかけがあった訳じゃない。
でもなぜか、このときになって突然頭に思い浮かんだ場所があった。
……行ってみる価値はあるか。
とりあえず、水をかぶったまま出て行ったことが気になり、俺は一旦自分の部屋にものを取りに戻った。

――――

夜風の吹く寮の片隅。
生徒たちのいる寮棟の端には、金属製のドアの向こうに非常階段が設置されている。
申し訳程度の屋根が付いた、吹きさらしの鉄の階段。
そこからは微かにだが、海の向こうの都市の煌びやかな明かりが見えている。
その階段に、生乾きの髪を夜風に弄られながら、階段に腰を掛けてうずくまる少女の姿があった。
「やっぱり、ここか」
少女の背後から、耳慣れた力のある声が聞こえてきた。
「風邪ひいて寝込むつもりか、馬鹿が……」
振り返るとそこには、さっきまで罵り合っていた幼馴染の姿があった。
「何を、捨てられたペットみたいに縮こまってんだよ、鈴」
そう言った修夜は、小脇に何かを抱えて自分を見下ろしている。
見られた。
見られたくないところを、よりにもよって一番いやな奴に見られた――。
鈴はそんな思いに駆られ、慌てて逃げ出そうと立ち上がる。
「待てって……!」
修夜は鈴を制止しながら、小脇にかかえていたバスタオルを鈴の背中に投げつけた。
何かをぶつけられたと気付いた鈴は、ついいつもの調子で鶏冠に来て振り向き、声を出す。
「いき
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