記憶欠落 〜夏目side〜
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はあ、と私はため息を吐いた。
あの戦闘から数時間、雪村君と契約を結んでから数時間。
授業が始まってもなかなか雪村君は来なかった。
もちろんただの寝坊だろうと言うのは分かっている。
けれどそれでも不安なのだ。
雪村君の身に何か起きたんじゃないのか、と。
私がこの学校に転入した理由は、この学校の魔術師が一人減ったから。
いや、減ったと聞かされたから。
減ったから学校を守る魔術師として派遣された、ということなのだが実際のところ死んだ魔術師なんていなかった。
どういうことか上に尋ねたが要領を得た回答は貰えなかった。
これには納得がいかない。
私にだってプライベートがあるのだ。勿論一般人と比べて私は自由でいられないのは分かっているし、しっかりとした理由があるのなら別にいいのだ。
私が気になったのは不透明さ。
いつも協会は的確な指示を与えてくれた。それがここ最近はおかしいのだ。
(何か魔界との間であったわね)
そう思った。
そしてその仮定は正しいだろうと確信した――雪村君と出会って。
私は雪村君を一目見て、
(ああ、この人だ。この人が私のパートナーなんだ)
――ただの直感だった。でもそれが正しいのだ。
『あたしね、彼を一目見た瞬間、まるで大好物のメロンパンを百個食べたような気持ちになったの』
『そしてね、思ったの。――――あたし、彼の契約者になるっ、てね』
――懐かしい。確かこの言葉を言ってた人は……、言ってた人は……
誰だろう?
分からない。忘れてしまった。頭からすっぽりと抜けて――――。
そう最近はそんなことが多いのだ。
記憶の欠落
欠落という言葉が最もしっくりくる。完全に記憶が無い期間があるのだ。あるところまでは記憶があるのに、その先で記憶がすっぽり抜け落ちる。そしてまたあるところから記憶している。
最初は純粋に不安なだけだった。けれど雪村君の指摘と、私の推論をあわせると不安だなんて言葉で表せるような状況ではないのかもしれないと思った。
(私って……二重人格なのかしら)
その可能性は十分にある。なぜなら私は風系統の魔法を得意とする魔術師なのに、夏目家は代々雷系統の魔法を得意としている。お母様もおばあさまも、そのさらに前に遡っても、だれも風系統の魔法を得意どころか扱うことすらできないのだ。
魔法は人の心のありようによって性質を変えるという。それなら私もその類なのかもしれない。そしてもしそうならば、途切れる記憶、家の性質とは違う魔法の二つを鑑みて私は二重人格の可能性がとても高いのだ。
ガラガラッ
授業中の静かなクラスにドアの開く音が響いた。
そして現れ
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