第七十六話 富を求めるならその十二
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だからだ、ハーデスにしてもだというのだ。
「治められる場所が冥界であるだけで」
「そうですね、そのご本心は」
「お話をする度にわかるわ」
勿論智子とハーデスは知己の間柄だ、神話の頃より数えきれない位話す機会があった。そしてそこでわかってきているのだ。
「あの方は陰気かも知れないけれど」
「善神ですね」
「紛れもなくね」
それがハーデスだというのだ。
「だからこそ貴女も今も共にいるのね」
「はい」
豊香はペルセポネーとして確かな声で答えた。
「冬の間だけですが」
「それでも共にいるわね」
「そうしています」
「邪悪な神はね、ギリシアにはそうはいないわ」
このことは智子の言う通りだ、少なくともシェークスピアの戯作に出る様な権力欲や嫉妬心から堕ちた存在はいない。
それでだ、智子も言うのだ。
「そして私達もね」
「善神であるからこそ」
「怒りは持っていても」
ギリシアの神々はよく怒る、これも彼等が人間的とみなされる所以である。
「しかしああした者達を戦いから降りてもらうにあたって」
「与えるのは死でjはないですね」
「より温かい実り」
「願いを適えることですね」
「ええ、本来はあの方も」
智子は遠くを悲しい目で見た、そのうえでの今度の言葉は。
「セレネー姉様もね」
「姉様はとても素晴らしい方なのです」
聡美は目を伏せて俯いてこう述べた。
「ただ。想いが強過ぎて」
「強過ぎる想いは呪いになるというけれど」
「その通りですね」
「あの方は呪いに囚われているのよ」
智恵の女神としてそこまでわかっていた、考えこの答えを出したのである。
「だからこそああしたことをしておられるのよ」
「ではこの戦いを終わらせることはですね」
「あの方の呪いを解くことでもあるわ」
この一面もあるというのだ、剣士の戦いを終わらせるということは。
智子はこのことを話しつつだ、今も俯いている聡美を見て問うた。
「貴女もそれ故によね」
「はい、お姉さまをお救いしたくて」
こう思っているからこそ、というのだ。聡美は思い彼女は想っている。この二つの違いもまたはっきりと出ている。
その思い故にだ、聡美はセレネーをというのだ。
「この戦いを終わらせたいと思ってきています」
「そうね」
「一人ではずっと。何も出来ませんでした」
「一人では出来なくとも」
だから来たのだ、智子と豊香も。
「今は私達がいるからね」
「はい、御願いします」
「御礼や御願いはいいわ、私達もね」
「お姉様をですか」
「ずっと。どうしにかいたいと思っていました」
そうだったというのだ、智子も。そしてこれは。
豊香もだ、目を強くさせて言った。
「私もそう思っていました」
「貴女が来てくれるのを待っ
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