二十二 無明の闇
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いよ」
神農の真下から、再びナルトの声がした。
顎を蹴り上げる。空へ突き上げるかのような凄まじい一撃。直撃し、鈍い音を立てて飛ぶ男の巨体。気づけば空を舞う己に、今更ながら目を疑う。
顎に走る激痛を堪え、神農は下を見下ろした。香燐の傍にあったはずの丸太が影も形も無い。
(ッ、やられた!!)
一番最初に神農の覇気を喰らって吹き飛ばされたほうがナルト本人だったのだ。気絶したふりをし、メスに変化させていた影分身が神農に飛び掛かったのを見計らって、すかさず丸太に変化。「自分の得物を把握しろ」という助言のような言葉をナルトがわざわざ神農に告げた理由は、メスに気を取らせるための布石に過ぎない。
あたかも【変わり身】を使ったように見せ掛け、影分身を本物と信じ込ませる。そして神農自身がこちらに接近してくる機を窺っていたのである。案の定メスに変化した影分身に注意を向けていた神農は、ナルト本人が変化している丸太を気にも留めなかった。
つまり神農は裏を読んだつもりで、逆にそれを逆手に取られたのだ。
完全に虚を衝かれ、呆然自失から立ち直っていない神農。蹴りによる衝撃で未だ宙に浮かぶ彼の背後にナルトが回り込む。そのまま鋼糸で彼の強靭な肉体を縛りつけた。通常ならば大樹でさえも真っ二つにする鋭利な糸は、神農の盛り上がった筋肉に堰き止められ、切断までに至らない。だがナルトにとってはそれが狙いだった。受け身の取れない状態の神農を逆さにする。直後、破竹の勢いで高速落下。
「【表蓮華】……ッ!」
耳元で風を切る音が遅れてやってきた。続いて、ドゴオッという轟音が大広間を支配する。
派手な土煙。凄まじい墜落によって引き起こされた風圧が香燐の前髪を跳ね上げた。
部屋の中心から蹴立ててくる砂雑じりの風に、思わず手の甲で口元を押さえる。だが目だけは忙しなく動き、ナルトの姿を捉えようと香燐は煙を透かして凝視した。
煙が晴れていくのと反比例するかのように、彼女自身の心臓の音が高まっていく。
朦々と立ち込める砂煙の中で、ナルトのチャクラを感じ取り、香燐はほっと一息ついた。しかしながら同時に不快なチャクラをも察して、再び顔を強張らせる。
「痛くも痒くもないなあ…」
自身の身体に降り掛かった埃をぱんぱんとわざとらしく掃いながら、五体満足のていで笑う神農。反して彼と対峙するかのように佇むナルトは少々息が乱れていた。
【表蓮華】は『八門』の内第一の門『開門』だけを開き、脳の抑制を外し人の筋肉の力を限界まで引き出して繰り出す技。そのため如何にナルトといえど、多少の疲労は否めない。
しかしながら【表蓮華】の技の威力は、エメラルドグリーンの石畳が物語っていた。
ばら撒かれた瓦礫。無数に飛び散っている石片。床に施され
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