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久遠の神話
第七十六話 富を求めるならその九
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「一人でしかなかったですから」
「戦いを止められなかったんだな」
「姉様も」
 セレネー、彼女の想いもそれから起こっている暴走をだというのだ。
「ずっとそうでした。ですが」
「今回で、だね」
「全ての剣士を戦いから解放し」
「そうしてだね」
「この戦いを完全に終わらせるつもりです」
「わかったよ。しかし」
 王は聡美の話をここまで聞いてそれからこうも言った、その聡美に対して。
「今までは女神の力でもどうにもならなかったんだね」
「戦いを止めることがですね」
「貴女はアルテミスだね」
「そうです」
「アルテミスといえばギリシアの神々の中でかなり力がある女神の一人だったね」 
 月に狩猟、産出とかなりのものを司っている。双子の兄アポロンと共にかなりの力を持っている神の一柱であることは確かだ。
 だが、だ。そのアルテミスですら彼女だけでは戦いを止められなかった、王が今彼女に言うのはこのことなのだ。
「それでも出来なかったんだね」
「残念ですが」
「それは何故か」
 王はそれが出来なかった理由も考えて述べた。
「アルテミス女神とセレネー女神を比べたらセレネー女神の方が強かったのかな」
「私のお姉様です」
 聡美はそのセレネーに敬愛と憧憬の念を込めて述べた。
「それだけに」
「セレネー女神の方が強いんだ」
「ですから」
 今までだ、彼女を止められなかったというのだ。
「私が至らなかったのです」
「けれどだね」
「はい、今は」
 どうかというのだ、今現在は。
「アテナ姉様とペルセポネーがいますので」
「三柱の女神がいれば」
 それでだというのだ。
「それぞれの至らない場所もだね」
「はい、今の様にです」
「終わらせていっているね」
「長い間、私も周りが見えなくなっていました」
 このこともわかったのだ、智子達と共に動く様になってから。
「全ては私の不明でした」
「いや、手遅れにならないうちに過ちに気付いて正せたらね」
「不明にはならないですか」
「私はそう考えているよ」
 こう微笑んで聡美に言うのだ。彼女の左右にいる智子と豊香にもだ。
「違うかも知れないけれどね」
「ではこの戦いで」
「私は今夜決めさせてもらうよ」
 無論勝利を収めてだ、彼は完全にその気なのだ。
「貴女達の誘いに乗せてもらってね」
「では」
「結局ね、人間ってのは因果なものでね」
 今度は唇の右端を歪めてシニカルに笑っての言葉だ、自嘲も込めた。
「お金、富がないとはじまらないんだよ」
「それもまた真実ですね」
「そうだよ、夢や理想も大事だけれど」
 だが、だというのだ。
「そういうものだけでは何もはじまらないんだよ」
「富もあってこそですか」
「そこからはじまるんだ。もっとも富を得てそ
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