二十一 権謀術数
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存を感じ取り、香燐は挑むように問い詰める。彼女に続いてナルトが、質問というより確認の言葉を投げた。
「村人を拉致してこの砦の何処かに監禁しているんだろう」
その発言に神農は目を見張る。彼は一抹の賞賛を込めた眼差しでナルトを見た。
「全てお見通しというわけか…。その通りだよ。わしを善人だと信じ切っている村の奴らの前で、罠に掛かってみせたのさ。普通は即死ものだが、わしの術は特殊でな。医療忍者、白眼でさえ誤魔化せる…。村人ごときの眼を欺き、死を装うのは赤子の手をねじるよりも簡単だ。そしてわしが死んだという悲しみに暮れた瞬間を、空忍に襲わせた」
そこで一呼吸置く。片眉を聳やかした神農は、秘密を打ち明けるかのような口振りで立て続け様に語った。
「人は絶望する―――悲しみに支配されんとする時、その原因を作った者に向けられる怒り・憎しみ…そして恐怖。それら全てが闇のチャクラを作りだす…。砦を動かす動力源として、その闇のチャクラを利用する」
滔々とまくし立てる神農を、香燐は怪訝な顔で見る。その一方で腕組みをしながら瞑目していたナルトが、口元に苦笑を湛えた。
「村人にはわしの野望の片棒を担いでもらう。大いにチャクラを貢献してもらうとするよ。この要塞――『アンコールバンティアン』を動かすためにな!!」
自信たっぷりに神農は話を結ぶ。長い演説がようやく終わったか、とナルトはうっすらと瞼を開けた。
満足げに顎を撫でつけている神農を静かに見遣る。彼を見つめるナルトの瞳に、哀憐の色が微かに過った。
「……ひとつ、忠告しよう。自分の得物は落とさないほうがいい。己の首を絞める事になる」
「ふん。メスの一つや二つ、無くしたところで何になるというのだ?」
ナルトの忠言を馬鹿にしたように、神農が鼻をふんと鳴らす。
翳りの入った双眸をナルトは僅かに細めた。そしておもむろに身体をずらす。
神農の視界に入らないよう背中に隠していたものがその全貌を明らかにしていく。
石柱に突き刺さったメス。だが、その切っ先は柱の壁を刺してはいない。
「刃は用途が広い。人を殺める以外に使い道は幾らだってある。メスだってそうさ」
嘲笑を浮かべていた神農の顔が瞬く間に変貌する。
彼の視線の先には、己の切っ先で無線機のスイッチを入れているメスの姿があった。
「この無線機は要塞の監視室に繋がっているんだよな?部下に指令を出す時も使うんじゃないか?……砦の中全体に響き渡るスピーカー。違うかな?」
悠揚迫らぬ穏やかな声で、ナルトは告げる。
驚愕に叩きのめされ、神農は一時声が出なかった。
だが我に返ると、精一杯虚勢を張って、「ば、馬鹿が…ッ!監視室にいる奴らが無線を切るに決まっている!」と叫ぶ。しかしながらその瞳には隠し切れない狼狽の色があった。
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