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渦巻く滄海 紅き空 【上】
十九 廃墟
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の蒸し暑さはすっかり払拭されていた。
「こっちだ」
メスに宿ったチャクラからそのチャクラの持ち主を香燐は感知する。千里眼とも言うべき超広範囲に及ぶ索敵術【神楽心眼(かぐらしんがん)】を持つ彼女は、神農の居場所を見事に捜し当てていた。
「メスに宿ってるチャクラの量は少ないけど、探知出来る?」
「特定済みだ。問題ねえよ、ダーリン」
ナルトの懸念を香燐は不敵な笑みで拭い去る。しっかりしている彼女の足取りを頼もしく思いながらも「だからその呼び方止めてくれ」とナルトは呟いた。既に諦めの境地に入っている彼を、憐憫の眼差しで君麻呂は見つめる。

突発的な驟雨は止んだが、その名残か、木立の間を白い霧が漂っていた。大気を浮遊する乳白色がナルト達の視界を覆い尽くす。三人の頭上に、雨水をたっぷりと含んだ樹冠が大粒の水滴を灌いだ。
前髪に滴る雫を払い除けたナルトが目を細める。濃霧の中、何か巨大なモノがぼんやりと浮かんでいた。

「…何あれ?」
「遺跡、じゃないか?」
ナルト同様それを目に捉えた香燐と君麻呂が口々に言う。白い霧が一面に立ち込める湖の向こうに、異様な石造りの建築物が見えたのだ。
風雨に曝され摩擦しているが、精巧な浮彫。かつてはさぞかし荘厳であっただろう大理石の壁は、風化して崩れている。


古い神殿を思わせるその遺跡は、ジャングルに埋もれるようにひっそりと聳え立っていた。


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