十九 廃墟
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た彼は、香燐が蹴った炭に目を留める。やにわにその炭を拾い上げたナルトは、それを慎重に拭い去った。
黒焦げの炭が剥れ、徐々に見えてくる銀の光沢。
「小刀ですか?」
「いや、メスだ」
黒い塊の正体は外科用のメスだった。医者もしくは医療忍者が用いるそれは、ナルトの手の中で鈍い銀の光を放っている。
「なぜこんなところに……」
訝しげに眉を顰める君麻呂の声を耳にしながら、ナルトはそのメスを空に翳した。
「あれだけの火災で溶けていない。妙だとは思わないか?」
「……普通のメスではない、という事ですか?」
益々眉間に皺を寄せる君麻呂の隣をすっと通り過ぎて、ナルトは香燐にメスを見せる。必要以上にナルトに顔を寄せた香燐が、彼の手元を覗き込んだ。
「このメス…。チャクラが宿ってやがるな」
「チャクラが?」
香燐の答えに怪訝な表情を浮かべる君麻呂に反し、ナルトは満足げに「香燐なら気づくと思ったよ」と頷いた。
「ウチの眼を舐めんなよ」
得意気に言う香燐を胡散臭そうに睨みつけながら、君麻呂は思い当った事を口にする。
「カブトさんの【チャクラ解剖刀(メス)】とは違いますね」
両手を鋭いメスと化す【チャクラ解剖刀】は、外傷ではなく体内の筋肉や神経系を切断する。だがこのメスは、刃物そのものにチャクラを宿している。いわばチャクラを宿す事で通常のメスより殺傷力を増すチャクラ刀だ。木ノ葉の猿飛アスマが用いる【飛燕(ひえん)】という付加系の術に近いかもしれない。
「医療忍者がこの村にいたという事でしょうか?」
一般の医者がチャクラを宿したメスを持っているとは考えにくい。そう考えての問いだったが、ナルトは君麻呂に同意を示さなかった。
「この村に忍びはいない。ならば抜け忍でも隠れ住んでいたか?もし外部から敵が攻めたのならば、抜け忍は自分の居場所確保のために村を守るだろう。だがこの有様…。大体、里を抜けたお尋ね者が隠れ家を燃やす必要が何処にある?」
ナルトの言葉を一字一句逃がさぬよう、耳を澄まして聞いていた君麻呂が口を開く。
「確かに、どうも腑に落ちませんね」
「つまりは隠滅だよ。証拠のね」
「証拠って何の証拠だよ?」
言葉の先を催促する香燐。彼女に促されたナルトが微かに口元を緩ませた。
「『神農』という男がこの村に滞在していたという証拠さ」
「神農と言えば、大蛇丸様に【再生禁術】を進呈した医者ですよね。確か各地を渡り歩く浮浪の名医だとか…」
「世間体はな」
ジャングルの密林で谺する声。囁きにも似たその会話を、生い茂る草木の葉擦れの音や鳥の囀りが掻き消していた。
香燐を先頭に、樹木の枝上を飛ぶように駆けるナルトと君麻呂。先ほどのスコールで冷たい空気が降りてきたため、ジャングル特有
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