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Fate/InterlaceStory −剣製の魔術師−
第四話 ー 最低限の覚悟 ー
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ち負かされたことに対してでは無い。
普段から冷静で、昨日の戦闘においても冷徹に状況を処理したあの士郎が……感情を暴発させながら叫んだことに対してだ。
「何故最悪の場合を考えない!血に堕ちて…そして彼女を殺せるか殺せないか、躊躇してる暇なんてない!!迷っている間に自身の大切な人が数多の命を奪う事になるんだ!」
恭也の側に駆け寄っていた忍はその言葉に思わず息を飲んだ。
――想像してしまったのだ。
もし本当に自分が吸血衝動に敗退し、真の吸血鬼と成り果てた時、数多の人間から吸血し命を奪っているところを恭也が知ったらどんな表情をするのか……。
――それは悲しみ、絶望に他ならないだろう。
その事に絶句しつつ、彼女は士郎の悲壮な叫びにまさかと見つめてしまう。
「――もしかして士郎君は……あるの?大切な人を」
その言葉に士郎は静かに顔を上げ、何かを思い出すように遠くを見つめる。
「……ああ。桜といって血は繋がってなくとも家族も同然の妹のような後輩がいた。元々広い一軒家に一人住んでた俺にとって、彼女が来ると家族が帰ってきたような…そんな悪くない感情を抱いたな」
その当時の事を思い出しているのか、士郎は口元に笑みを浮かべる。
しかしそれはすぐに消え去り、先ほどの…悲しみ、絶望にまみれた表情に戻った。
「――忍とは違って桜は吸血鬼じゃなかったけど、確かに人外だったんだ。人外とつくだけあって、桜は俺の知らないなかでその精神を抑え続け、人としての心を必死に守り抜いていたみたいだった。――だがそれも限界が来たみたいでな。訳あって海外に身を置いていた俺が日本に帰ってきたときには…彼女は既にその精神に堕ちていたんだッ!」
士郎の贖罪ともとれるその慟哭に恭也と忍は表情を歪めた。
特に忍は、その桜という少女がもう一つの心と長年に渡って苦痛とも呼べる戦いを続けていた事に思わず唇を噛む。
今の自分にはさほど過激な吸血衝動はない。……だがその少女はどうだろうか。自身とは比べられない程の衝動と、何年にも渡って抗っていたのだ。
「俺には自分の目が信じられなかった。海外に出るまでっ、先輩――そう慕って俺を呼んでくれていた妹が…自身の見えるところで、数多の人を飲み込み喰らっている光景なんて。――ああ迷ったよ。今の恭也のように桜を殺さなければならないなんて!!……だが時間は残酷だ。俺が躊躇しているうちに桜は更に百、いや数百人以上の人を殺戮していたんだからな」
相変わらず士郎からは感情と言えるものが表情から窺えない。…だが二人には、そんな彼の瞳の内に宿る光が泣いているように見えた。
「その時自分の甘さを悟ったよ。…俺が躊躇すればするほど最愛の家族が殺戮を続けていく。――それを見逃すのは余りにも自
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