第一部:蒼の鬼神
悪魔と契約した少年
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れる龍と女神への信仰は形ばかりとなり、経典の湾曲解釈による犯罪も後を絶たない。そして、それを野放しにする騎士たち。
現在王国は、《新興貴族》と呼ばれる新文化を唱える貴族たちと、《旧守貴族》と呼ばれる古い格式を重視する貴族たちの、二つの派閥に分けられていた。王は《新興貴族》の傀儡で、王女は《旧守貴族》を率いて反乱をもくろんでいるとされる。どちらが勝っても結果的に政治は変わらないだろう。なぜなら、両者がともに腐りきっているのだから。腐敗を正そうとした若き王子は島流しにされ、西の都市に流されたという。
そして少年は、運悪くも聖職者たちの汚職場面に遭遇してしまったわけだ。大量の札束は《免罪符》。これを手渡すことで、犯罪者たちは聖職者に見逃され、犯罪を無かったことにできる。
「おやおや……子どもがこんなところに何の用ですかな?」
「ちっ、タダの餓鬼かよ……驚かせんなっつーの」
聖職者と男がそれぞれ呟く。
「あ……」
「何故このようなところにいるのかはわかりませんが……とりあえず、見られてしまったのならば仕方がない。……殺しなさい。金額の一部を返済しましょう」
「そいつはいい!」
男がニヤリ、と獰猛な笑みを浮かべて、地面を蹴る。爆発的な速度で、少年との距離が詰まる。
「うらぁっ!」
男が分厚い筋肉で覆われた右腕を振るう。腕は少年にぶち当たり、ゴシャリ、という子気味のいい音を立てた。少年の左腕の骨が砕け、筋肉が裂けた。鮮血が噴き出す。
「かはっ……」
三回目に仕えた主は乱暴な性格の男で、何か気に障るたびに何度も殴られたり蹴られたりして来た。しかし、これはその何十倍もの威力を持ち、何十倍も痛い。度を越した激痛のせいで、むしろ痛みが感じられないほどだ。
「おいおい、もう終わりかよ……」
「ふむ、案外脆いものですね……さて、私の上司はまれな勤勉な方でしてね。不正を嫌うんですよ……こんな場面を通報でもされたら厄介です。とどめを刺していただけないでしょうか」
「言われなくても分かってらぁ」
どすどすと音を立てて、男が近づく。少年はぼやける視界で、男の太い脚を見た。
――――ここで、終わりなのか。
漠然とした思考が浮かぶ。自分はこの薄汚い路地裏で、何を見つけることも無く一生を終えるのか。
それでもいいか、と思ってしまった。どうせこの先も、待っているのは貧民同然の暮らし。生きていても意味はない。
『本当ニソウ思ウノカ』
誰かの声がする。本当は人の言葉など喋れないのに、無理やり自らの声を人語の形にした、そんな声だった。
『汝ハ心ノ何処カデハ、自ラノ命尽キル時ヲ拒ンデ居ルノデハ無イカ』
《ソレ》の言葉が、なぜかすっ、と心に沁みこんできた。なぜだ
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