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ウォーロック・ブレイド
序文

[1]後書き [2]次話
 かつて、《絶対強者》と呼ばれた存在がいた。虹のごとき七色に輝く体と、二対四枚の翼をもった、全ての精霊(エレメンタル・スピリット)と、生命体の王者。

 《勝利の女神》と呼ばれた存在がいた。《絶対強者》永遠の伴侶として、世界を旅した三対六枚の翼の天使。

 彼らの出会いからはるかな時が流れた。かつて世界を滅ぼさんと、《絶対強者》達と争った《世界の闇》は影をひそめ、彼らの産み落とした《神々》は世界を塗り替え、新たな歴史をつくり出した。何度も世界が改変され、その度に新たな神が座に就いた。

 そんな歴史の上に、この世界は成り立っている。

 《ST002》と呼ばれる、神々よりもさらに高き位置に在るという《真の神々》によって作り出された異世界の一つ。それがこの世界の正体だ。

 水と土、緑と炎で作られたこの球形の惑星には、五つ程度の広大な大陸が存在する。


 物語の舞台となるのは、その中心。人間と呼ばれる種族によって構成された、最も巨大な大陸だ。東西南北、そして中央に巨大な都市と、それぞれ独特の文化を所有している。

 王国は《新興貴族》派と《旧守貴族》派に別れ対立し、政治汚職は後を絶たない。国王は傀儡、王女は反逆をもくろみ、腐敗を正そうとする王子は島流しにされてしまった。

 奴隷売買は当たり前、最貧困街では『自由である』ことを除けば、奴隷の物よりもつらい生活が待っている。

 かつては人と心を通わせていたはずの竜達は姿を消し、《絶対強者》の威光を知らぬ者さえ出始めた。竜達と深い関係にあった竜血族(エルフ)も、聖大樹(ユグドラシル)の森から外界へと出なくなってしまった。

 自由気ままな猫人族(ケットシー)は、もはや手の付けられないほど『自由な』種族となってしまった。略奪行為を繰り返す者たちも存在する。

 奴隷は《奴隷牧場》で『生産』され、売り飛ばされる。人さらいで連れてこられた者たちも、定期的に専用の館で行われる奴隷市で売り払われる。

 幻獣・魔獣の密漁は野放し、犯罪を取り締まるはずの騎士は見て見ぬふり。

 亜人族が氾濫し、人々を殺していく。

 《絶対強者》と《勝利の女神》が、《絶勝の女神》と《全知の書記》が守ったはずの世界は、破滅への一途をたどるのみであった。

 これはそんな世界で、《世界の闇》の眷属を従え、《絶対強者》の守った世界で「自分とは誰か」「何のために生きるのか」を探す為に戦った、一人の少年の物語。
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