夢のあとさき
参拾伍 一生分の夏
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る要素が詰まっている。第三新東京市がどんどん人口を増やしているのも、急激な部員の増加に関わったかもしれない。
「あ、こんにちは」
真司は後輩達に頭を下げる。
ロッカーに入れっぱなしのヨレヨレの体操服は、まるで初めてこの室内運動場を訪れた時と同じ服装である。
「おぉ、センセェ!生きとったんやなァ!」
現役の中に、運動量が減って少し大きくなった体をした選手が1人居た。
藤次である。
夏の大会から月日が経ち、微妙に伸ばそうとしている髪が何ともだらしない。
「藤次じゃないか!どうしたのさユニフォームまで着込んで」
「センセェこそ、勉強はせんでええんかいな!センターまであと一ヶ月ちょっとやで!」
真司と藤次はクラスも違い、部活を引退するとめっきり会う機会が少なくなっていた。同じ学校に通っているのにも関わらず、である。
それは真司がいつも教室に引きこもっているような人間だからだが。
「ワイな、センセェに面と向かって言いたい事あんねん」
「へぇ、何?」
「スポーツ推薦で仙宗(せんしゅう)大に受かったんや!今は東都の2部やけどな、まあまあな所とちゃうか!?」
「えっ!?仙宗!?凄いじゃないか!おめでとう!」
真司は目を丸くした。
仙宗といえば、目立ちはしないものの、プロ野球選手も輩出する強豪である。こんな国立高校から2年続けて名のある大学に推薦進学するとは。
準々決勝止まりとはいえ、藤次の実力が認められたという事だ。
真司は心から祝福した。
「セレクションから、あんま体動かしてないからな。仙宗に入ってから、あんまりウチの評判下げられたら困るんでな、昨日から現役同様バリバリ練習してもらってるよ。」
「あ、加持先生。こんにちは。」
「チワッス!」
そこに加持もやってきた。
真司と藤次は2人とも、立ち上がって挨拶する。
「碇、お前推薦の話全部断ったって事は、普通に受験だろ?こんな所で油売ってていいのか?」
「いやぁ…たまには体動かしたくなっちゃって……」
真司は頭をかく。
加持はそんな真司に笑みを見せた。
「ま、そうだよな。18歳の高校生が部屋の中でずっとカリカリやってちゃいけないな。今日は気の済むまでやってけよ。」
「はい。」
真司は頷いて、練習に参加した。
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「……藤次は凄いなぁ…僕なんかこんなにナマってるのに……」
「わんこ先輩も思ったより悪くはないですよ〜。あの人がおかしいんですよ〜。」
腹筋背筋、ウェートトレーニングなどの冬季の体力増強メニューをこなし、一通りついていくのもギリギリな真司はヒィヒィと息を切らしていた。
ウェートの重さ以外はほぼ同じメニューをこなしている真理が、涼しい顔で
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