暗黒の時代
第3話
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品種にもよるが、乗り物の移動速度は歩行時の数倍にもなる。広大な世界のダークエイジでは乗り物の移動が必要不可欠だ。徒歩で移動できなくもないが、戦闘や生産といった行動全般で消費するスタミナポイントを僅かに消費する上、当然の事だが、莫大な時間がかかる。少年は早期に馬を手に入れ、ホワイトウッドを目指すつもりでいた。
後ろではしゃぐアビーに口元を緩ませた瞬間、ピピピという電子音と共に「CALL」というボタンが表れた。
「どうどう・・・っと」
自分の馬に止まれの合図を出すと、AIは直ちに減速して停止をする。
「あら、電話ですか」
「あ、ああ。少し待ってくれ」
思いっきり顔の近くにあったアビーの吐く息がかかり、少し口篭ってしまう。
アレクシスは馬から飛び降りると、馬を通行の邪魔にならないように街道の脇に寄せてCALLボタンをタップした。
「はい。・・・うん、分かった。すぐ行くから待ってて」
通話終了ボタンを溜息混じりにタップすると、彼はアビーの方に向き直って「ごめん。ちょっと抜けないと」と言った。
「夕飯時ですし、私も一旦休憩にします」
軽い身のこなしで馬から飛び降りたアビーが手でパタパタと埃を払いながら言った。
「ログインしていないとパーティーが自動解散されるから、フレンド登録いいかな」
「あ、はい。是非ぜひ」
少年は慣れた手付きでコミュニティタブからフレンド管理メニューを開くと、少し躊躇した後にフレンド追加ボタンを押した。すると、アビーの前に「アレクシスからフレンド申請が届いています」というシステムメッセージが表示される。彼女は一瞬だけアレクシスを見ると、OKボタンを細い指でゆっくりと触った。
「改めて、宜しく。分からない事あったらメッセージ飛ばしてくれたらいいから」
「よろしくですよ。アレク君、次はいつ来れそうです?」
「えーと・・・」
インターフェイスで確認すると実世界の時刻は18時半を示していた。
「8時くらいかな。と、その前にログアウト準備しないと」
既に陽は傾き、先ほどよりも夜の闇が急激に支配を広げてきている。
アレクシスが馬の尻を軽く二度叩くと、馬はどこかに走り去って行った。
「準備ってなんです?」
「まあ、見てろって」
疑問符を浮かべる彼女をよそに、彼は身近にあった立木の枝を初期装備のダガーで数回切りつけると、ドサっと大地に枝が落ちて来た。
「枝ですか」
「そうそう、これをこの辺に持ってきてだな・・・っと」
見晴らしの良い場所まで枝を運ぶと、それを適当な形に整えてやり、インベントリ(バッグ)から火打ち石を取り出し、それらを枝の近くで数回鳴らすと煙が出て、やがてもうもうと火が夕闇を照らし出した。
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