第49話 ライバル気取りもほどほどに
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「岡田! 何故逃がした?」
銀時を逃がした後で、浪人【岡田似蔵】は仲間の浪人に攻め立てられていた。だが、その責めに対し岡田は平然と笑みを浮かべているだけだった。まるでお前達のことなど眼中にない。そう告げているかの様に。
「くそっ、追うぞ!」
岡田は使い物にならない。そう判断した浪人達は岡田をその場に残し、自分達だけで銀時と赤子を追いかけて行った。
そんな浪人達を尻目に、岡田は一人全く逆方向へと歩き出して行った。追跡をする気は毛頭ないのだ。今の岡田の中にあるのは銀髪の侍と本気でやりあう事。赤子になど毛程も興味はない。あのまま逃げ延びるにしても浪人達が無事捕まえるにしてもどっちにしても構いはしない。
岡田の胸中にそんなドス黒い思念が渦巻いていた。
***
江戸の中には数多くの高層ビルが立ち並ぶ。天人の襲来により江戸の文明は飛躍的に向上し、結果この様な風貌へと変化したのだ。
そのビルの中で一際大きな高層ビル、江戸でも有名な商人でもある【橋田屋】の本店でもある。きらびやかな佇まいとは裏腹に、その中では腹黒い商いなどを行い、終始浪人や攘夷志士達が出入りしている光景を目の当たりにしている。
そんな会社の内部、その廊下を一人せっせと掃除しているパートが居た。
パートの身分でありながらグラサンを粋に掛け、あごひげを生やしたちょっぴりダンディーな顔立ちをした男。しかし、そんな顔ぶれとは裏腹に見事なまでの転落人生を歩んでいるマダオこと長谷川その人であった。
「ったくよぉ、こないだは銀さん達に寿司奢ろうなんて馬鹿な事したせいでクビんなっちまったし、此処だって可愛いパートさんが居るって言うから来て見たら嘘っぱちじゃねぇか! 何所を見渡したって婆ばっかりだっつぅの!」
確かにパートで綺麗な女性は居るのだが、それらは全て下の事務系に回っている。なので長谷川が配属されている掃除などの雑用系には基本的に中年老婆クラスしか配備されていない。
まぁ、人生そんなものなのである。
「はぁ、此処の仕事もきついし、最近になって浪人とかの出入りが盛んになってきたみたいだしなぁ。このまま此処に勤めてるとまた何か厄介事に巻き込まれそうだし、早々に転職先探した方が良いかなぁ?」
【だが、そんな事言って簡単に見つかる物なのか? お前この職場だってどれ程苦労して見つけられたと思っているんだ?】
突如、長谷川に天の声が囁いた。その声を聞いた長谷川がふと思いとどまった。
そうだ、何を先走った考えをしてしまったんだ。確かに此処最近危なっかしいとは思っていたが、だと言って早々に仕事をくら替えしていたら最終的に就職できなくなってしまう。それだけは御免被りたいのだ。
「そうだそうだ、少し辛いと思っただけですぐ辞めちまう。最
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