第49話 ライバル気取りもほどほどに
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一種とも言える。故に即座に反応するのは至難の業と言えるだろう。
目の前に居る【こいつ】以外は……
「面白い喧嘩の仕方をするねぇ」
銀時の目の前に立っているそいつは他の浪人とは違っていた。銀時の必殺の一太刀を持っていた刀で受け止めていたのだ。それだけならば多少腕のある浪人だと納得出来る。だが、その浪人は目を開けていなかった。
盲目なのか、それとも単に目を開けてないだけなのか? どっちにしても銀時が知るべき事じゃない。赤子が重力に従い落ちてきた。それを察知したかの様に空いていた手をクッションの様に位置取り、赤子を受け止める。落下位置はドンピシャ。だが、こいつだけは例外だった。
「只強いだけじゃない。守る戦いに慣れている。赤ん坊をそんな風に扱う人間なんて早々は居ないだろうな」
「お前等だったらどう扱うってんだ? 見るからに童貞から卒業してなさそうな顔ぶればかりじゃねぇか。男ってなぁな、赤ん坊の世話が出来てようやく一人前なんだよ」
「その口ぶり、それにあんたからは血の臭いと一緒に何所となく乳臭い臭いがするねぇ。そのガキの他に赤子を育てたっぽいねぇ」
勘繰るように目の前のこいつは鼻をひくつかせてきた。その仕草が銀時には至極不愉快に思えた。まるで自分を嘗め回されているかの様な感覚だった。
気持ち悪い奴だ。見えるんだったらその目で見れば良いだろうが。
言いたくなる気持ちをぐっと抑えつつ、銀時は目の前に立つこいつを睨んだ。
「そろそろミルクの時間だ。急がねぇと愚図る。退け」
「その言いよう。あんた父親みたいだねぇ。そのガキじゃないにしても、それならばこの乳臭い臭いにも合点が行かぁな」
一人で勝手に納得している。不気味に笑いながら勘繰っているような素振りを見せている。それともフリなのか。
ふと、そいつは自ら刃を引いた。押し負けて前のめりに倒れる前に銀時もまた、自分から一歩引いた。
「あんたみたいな強い奴をやるのに片手が塞がってるようじゃつまらないねぇ。今度会う時は両手が開いてる時に会いたいねぇ。さっさと行きな」
「やれやれ、最近はライバルキャラ気取りの奴が多くて困るぜ」
意味深な発言を残しつつも銀時はその男を右手に避けて走り去って行った。走りつつも横目で先の男を見る。まさかとは思うが逃がしておいて後ろから斬り付けると言った真似はしないよな。
不安を感じつつ見つめたが、視線の先の男はその場から動こうとしない。無論持っていた刀をこちらに振り下ろす気配も見受けられない。
どうやら本当に逃がしてくれたようだ。
しかし、一体何故?
分かる事と言えば面倒で無駄な戦いをこいつのお陰でどうにか回避出来た事だろう。追っ手が来る前に早い所ずらからなければ更に面倒な目に会う。
そう危惧した銀時は一目散にその場から逃げ去った。
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