暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜絶望と悲哀の小夜曲〜
小さな相棒
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欲は、これは存在するのも納得が行く。プレイヤーの脳は、与えられている感覚感情が、現実世界のものなのか仮想世界のものなのかなどということは意識していないだろうから。プレイヤーは眠くなれば街の宿屋に行き、懐具合に応じた部屋を借りてベッドに潜り込むことになる。莫大なコルを稼げば、好みの街で自分専用の部屋を買うこともできるが、おいそれと貯まる額ではない。

食欲に関しては、多くのプレイヤーを不思議がらせた。現実の肉体が置かれた状況など想像したくもないが、恐らく何らかの手段で強制的に栄養を与えられているのだろう。つまり、空腹を感じてこちらで食事をしたとしても、それで現実の肉体の胃に食べ物が入るわけはない。

だが、実際にはゲーム内で仮想のパンだの肉だのを詰め込むと空腹感は消滅し、満腹感が発生する。このへんのメカニズムはもう脳の専門家にでも聞いてもらうしかない。

逆に言えば、一度感じた空腹感は、食べないかぎり消えることはない。多分、絶食しても死ぬことはないのだろうと思う。しかし、やはりそれが耐えがたい欲求であることに変わりは無く、プレイヤーは毎日NPCが運営するレストランに突撃してはデータの食い物を胃に詰め込むことになる。

蛇足だが、ゲーム内での排泄は必要ない。現実世界でのことは、食う方面よりも更に考えたくない。

さて、話を戻すと──

初期に金を使い果たして、寝るはともかく食うに困った者達のうち大半は、例の共同攻略グループこと《軍》にいやおうなく参加することになった。上の指示に従っていれば、少なくとも食い物は支給されたからだ。

だが、どこの世界にも協調性など薬にしたくもないという人々が存在する。はなからグループに属するのをよしとしなかった、あるいは問題を起こして放逐された者達は、【始まりの街】スラム地区を根城にして強盗に手を染めるようになった。

街の中、いわゆる《圏内》はシステム的に保護されており、プレイヤーは他のプレイヤーに一切危害を加えることはできない。だが街の外はその限りではない。

はぐれ者達ははぐれ者達で徒党を組み、モンスターよりもある意味旨みがあり、危険の少ない獲物であるプレイヤーを街の外のフィールドや迷宮区で待ち伏せして襲うようになったのだ。

最後に四つ目のグループは、簡単に言ってその他の者達だ。

攻略を目指すとしても巨大グループには属さなかったプレイヤー達の作った小集団がおそよ五十、人数にして五百。その集団は《ギルド》と呼ばれ、彼らは《軍》にはないフットワークの良さを活かして堅実な攻略と戦力増強を行っていた。

更に、ごく少数の職人、商人クラスを選択した者達。せいぜい二、三百人規模ではあったが、彼らもまた独自のギルドを組織して、当面の生活に必要なコルを稼ぐためスキルの修行を開始した。


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