第48話 「嵐の前触れ」
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な。今ならまだ間に合う。そう思われたからこそ、自ら立たれた」
「その際、ただ漫然とこのままでは行かない、そう考えたと思うのか? 何を根拠に立たれようとしたのか?」
「貴族の横暴や汚職。それに社会不安や長い戦争だろう?」
ブラッケが自信ありげにそう口にする。
オーベルシュタインが、軽蔑を露にした視線を向けた。
あ、だめだ。こいつ、皇太子という、お立場を分かっていない。貴族の横暴も汚職も社会不安も、すべて平民相手の事だろう。そんな下々の事など、無視しようとすれば無視できるのだ。
門閥貴族どもが気づかなかったように、現皇帝陛下が眼を瞑っていたように、皇太子殿下も目を瞑ってしまえば良い。
それだけであのお方の周辺では、何事も起きない。
のほほんっとしていられる。少しずつ崩壊を続ける帝国。それすら気にも留めない。そんな貴族がどれほど多かった事か……。
その上、眼を瞑り、見ない振りをしてきた皇帝。皇太子殿下も、その中に埋もれてしまえば良い。下々の事など無視すれば良いのだ。それができる。できたはずなのだ。
「だというのに、あえて下々に目を向け、問題を直視なされた。その時、帝国だけを見たと思うのか? そんな筈はあるまい。同盟の事も、フェザーンの事も見られただろう。社会制度も現状も調べられたはずだ。あのお方は帝国の問題を直視なされたのだ」
「同盟の社会体制や問題点など、とうの昔にご存知だ。卿のように民主共和制に、過度の期待などしておらぬ。だからこそ、現実を見てこいとフェザーンに卿を寄越された」
オーベルシュタインの声に冷たいものが混じりだした。絶対零度の氷のようだ。だが、ブラッケはいまだ認めたがらない。プライドだ。つまらぬプライドが認める事を拒絶している。
薄皮のようなプライドが破れ、現実を直視できたとき、こいつは文字通り、一皮剥ける。
宰相閣下もそれを期待されているのだろう。
■自由惑星同盟 ロイヤル・サンフォード■
アンドリュー・フォーク中佐が私を訪ねてきた。
今回の出征について相談があるというのだ。私室の応接間で応対したものの、フォーク君は椅子に腰掛けるよりも先に、口を開いた。
滔々と語られる言葉に、政治家である私ですら、圧倒されてしまう。
「閣下。今回の出征についてですが、なにも帝国軍とぶつかる必要などないのです」
いきなり何を言うのかと思ったが、聞いているうちになるほどと思えてくる。
中々に弁が立つ。
しかし同盟軍は、アスターテまで強行軍で向かい、さっさと戻ってくる。それだけでいい、か。なるほどな。
「誰もいないアスターテで、いつまでも帝国軍が待っていられる訳ではありませんし、かといって有人惑星を占領できる訳も、ハイネセンまで進軍できる訳でもありません」
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