鬼面仏心
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」
「!」
かなりの怪我を負いながらも先ほどと変わらない様子とクロスと、軽く咳き込むシュラン。
「ケホッ、ケホッ・・・」
「やっぱり、ね・・・」
「!」
口に手を当て咳き込むレビィと、呆れたような表情で溜息をつくティア。
「そ・・・そんなバカな・・・」
目に映る光景はあり得ない。
自分が敵と認識した者は全て消え去ったはずなのだ。
「なぜだ!?なぜ誰もやられてねえ!」
だが、敵と認識したはずのナツ達は全員やられていない。
もちろん戦った際の怪我はあるが、魔法発動前と発動後、何も変わっていないのだ。
「シュラン・・・無事か」
「私は何ともありませんわ。クロス様もご無事なようです」
「姉さんはっ!?マクガーデンも大丈夫か?」
「うん・・・私は平気。ティアは大丈夫?」
「外傷なし。全くダメージは受けていないわ。ナツは?」
「・・・」
「大丈夫そうだ」
「みたいね」
やられた人間は誰もいない。
衝撃的なその光景にラクサスの体は小刻みに震えた。
「どうなってやがる!あれだけの魔力を喰らって平気な訳ねえだろ!」
予想外。
その文字通り、目の前に広がる光景は全く想像していなかった。
ラクサスが怒鳴ると、その問いに答える為待っていたかのようにタイミングよく、大聖堂入口に人影が現れる。
「ギルドのメンバーも、街の人も皆無事だ」
ふら・・・と体を左右に揺らしながら現れたその人物は近くの壁に凭れ掛かった。
荒く息をするその人物は――――――
「フリード!?」
「誰1人としてやられてはいない」
ミラと戦い、戦意喪失したフリードだった。
その服はボロボロで、立って歩く事さえやっとに見える。
「そんなハズはねぇっ!妖精の法律は完璧だった!」
ラクサスの怒鳴る声に対し、冷たい声が響く。
心地よい高さのソプラノボイス。言うならばミラとジュビアを足して2で割ってそこにフリードやリオンのような感情の読めない声質を混ぜた感じ。
表すなら氷―――――その声の主は、ただ冷静に、冷酷に告げる。
「あの魔法の完成度は認めてあげる。完璧じゃなかったのは魔法じゃない。術者よ、七光り」
その青い目を鋭い刃の切っ先の様に煌めかせるティアは、さらに続けた。
「完璧じゃなかったのは、術者の心・・・アンタの心よ」
白く細く長い指を突き付ける。
その目には鋭い光と現実的な闇、そして憐みに似た混沌が揺れていた。
「ティアの言う通りだ。お前がマスターから受け継いでいるものは、力や魔力だけじゃない」
目を見開くラクサスにフリードは告げる。
ティア以外の人、この場にいる人間1名を除く人達、ラクサスさえも知らない真実を。
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