第59話 咲と舞とチームバロン
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
咲たちは場所を改め、“ドルーパーズ”のボックス席に来た。
「よそのチームはみんな曽野村みたいな連中ばかりだ。みんなリミッターカットの裏技を見つけたからな。簡単な改造だけで、実体化したインベスを呼び出すことができる」
言って、戒斗は紅茶に口を付けた。
「……その裏ワザ流したのって、錠前ディーラー?」
咲は店の一番奥の個室席に目線を流した。タイミングが悪いことに、誰も座っていない。
「さあな。どこかの誰かが、ネットに流れた情報を元にやってみたらできたって感じだ。誰が流したかなんて分かりやしない」
「じゃあ、街で暴れてるインベスはっ」
「騒ぎの何割かは、便乗して悪さしているビートライダーズの仕業だ」
ザックはポケットからクルミの錠前を出しながら、アイスコーヒーをストローで吸い上げた。
「俺たちだって護身用の錠前が手放せない。ウチのチームは恨みを買ってるからな」
「確かに買ってそう」
「ド突くぞクソチビ」
咲はぷい、とよそを向いたが、すぐに俯き、ドラゴンフルーツとヒマワリの錠前を取り出した。
こんな物があるせいで――
「……い」
舞が掠れた声を零した。
「舞さん」
「ひどい、どうして……っ、これじゃもう、誰もあたしたちを信じてくれないじゃない……っ」
舞の黒々とした瞳から、涙が一粒、二粒と落ちた。
戒斗は何も言わなかった。咲も何も言えず、舞の膝の上の拳をさすってあげるしかなかった。
「――あんた、前に集まった時言ったな。街で暴れてるインベスが自分たちと無関係だって証明しないと、って。これでもう証明できなくなっちまったな」
ザックの言葉は皮肉より同情、あるいは同病相哀れむ色のほうが濃かった。
(こんなことにならないために説得して回ってたのに。あたしたちがしたことってなんだったのよ!)
咲はダンススクールの講師を思い出す。信じてくれる人も現れ始めていた。やっとこさ築いた信頼に、レッドホットは、他の多くのチームは、あっさり泥を塗ったのだ。
「先走るなよ」
咲と舞は同時に顔を上げて戒斗を見返した。
「お前のほうだ、ガキ。さっきみたいに後先構わず変身してビートライダーズを襲うような真似はするなと言ってるんだ」
「なんであたしが、そんなことしなきゃいけないの」
「言って聞かないなら力ずくで。さっきのお前はまさにそんな空気だった。俺が止めなければ、大方、曽野村たちをタコ殴りにしてロックシードを根こそぎ取り上げようとでもしたんじゃないか?」
言い返せなかった。曽野村と話した直後の咲の怒りはそれをやってもおかしくない値まで上がっていた。
戒斗は溜息をついて席を立った。隣のザックも戒斗に続く。
「争わずに話し合
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ