接触
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かで会ってるような気がして」
そう言う千李は愛の顔をじっと見つめ顎に手を当てながらうんうんと唸る。やがて千李は愛の周りをグルグルと回り始めた。どうやら昔の記憶を呼び起こしいるようだ。
「あ、もしかして……」
回るのをやめたかと思うと、千李は愛の真正面に戻りもう一度その顔をよく見つめる。
「だからなんだってんだよ」
「結構前の話だから私もハッキリとは覚えてないんだけどさ。小学生の頃に私と湘南で会ってない?」
「小学生のころだぁ?」
あまりにも突拍子もない話の持ちかけに愛は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。しかし千李は相変わらず愛の顔をじっと見つめている。
その様子を見た愛は、内心でため息をつきつつも小学生の頃の記憶を手繰ってみる。しかし、いくら思い出してもそれらしい記憶は見当たらない。
「なんか思い出した?」
「いや……記憶にねぇな。もしかしたら忘れてるだけかもしれないけど」
「まっ……そうよねぇ。私も結構あやふやだったし。変な事聞いちゃってごめんね」
千李は頭をかきながら微笑を浮かべる。それを見ながら愛は肩をすくめた。すると、千李の携帯が鳴った。
「ちょっとごめんね。……もしもし? なんか用大和」
千李は言うと愛に背を向け電話をし始めた。
後姿を眺めつつ愛はもう一度記憶を手繰ってみる。
……うーん、さっきはああいってみたけど。ハッキリとはアタシも思い出せないが、確かにどっかで会ったような気がしなくもないな。
顎に指を当てながら考え込む愛だが、結局明確に思い出すことはできなかった。
「はいはい、りょーかい。今日の夜には帰るから。うん、うん。じゃあそういうことで……ごめんね辻堂さん。話の途中に電話なんかしちゃって」
「いや、気にしてない。っとアタシはそろそろ帰りたいんだけどいいか?」
「ん、確かにもうそんな時間ね。引き止めてごめんね、じゃあ今日はお話できて楽しかったわ。私は今日、川神に帰るからしばらく会わないと思うけど、どうせまた来るからそのときはゆっくりお話でもしましょう」
「まぁ暇だったらな」
愛の返答を聞いた千李は満足そうな笑みを浮かべた後、一瞬にしてその場から消えた。それを呆然としながら見つめた愛は、
「……なんつーかよくわかんねーやつだったな。川神千李か……」
口では呆れたようなことを言っているものの、愛は少しだけ口角を上げ笑っていた。
愛とわかれた千李は極楽院に戻ると庭で遊んでいる瑠奈を呼んだ。
瑠奈はすぐさま千李に駆け寄ってきて千李に飛びついた。その後ろに続くように千李の気で作り出した狼、銀がやってきた。ちなみにこの銀という名は瑠奈がつけた名前だ。
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