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真剣で武神の姉に恋しなさい!
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 翌日の夕方、千李は大の通う稲村学園に民家の屋根を蹴りながら向かっている。なぜこんな移動方法をとっているかと言うと、一言で言えば目立たないためである。移動速度もそれなりに速く、一般人からすれば視認はできていないだろう。

「お、見えた見えた」

 そう言った千李の視線の先には目的地の、稲村学園がある。既に下校している生徒もちらほらと見える。その中には数人ガラの悪そうな生徒も見られる。

「うーん、大に外見とか聞いてみればよかったわねぇ。これじゃあ誰が誰だか……ん?」

 眉をひそめていた千李だが、何かに気付いたのかそちらに視線を向ける。千李が向いた先には学校の屋上に一人佇む、金髪の少女だった。すると、千李は何かを感じ取ったのか、口元をニヤリと上げ屋上に向かった。





 屋上に一人佇む金髪の少女、辻堂愛は下校する生徒を眺めながらつまらなそうにため息をつく。

 すると、後ろからいきなり声をかけられた。

「貴女が辻堂さん?」

 愛は無言で振り向くと、そこには長い黒髪をポニーテールにした少女が立っていた。服は私服なので稲村学園の生徒ではないことはすぐに分かった。しかし、そんなことよりも愛は別のことに気が向いていた。

 ……コイツ、一体いつの間にここにきやがった? 屋上のドアが開いた音はしなかったし。それに最初からいたにしても気配も感じなかった。

 愛は少女を睨みつけながら若干腰を落とし、拳に力をこめる。それに気付いたのか少女は両手を上げながら軽く声を漏らす。

「そう構えないでって別に怪しいもんじゃないから。……あぁでもいきなり現れりゃ十分怪しいわよねぇ」

 そりゃそうだ、と愛は内心で突っ込みを入れる。同時に手にこめていた力を抜くと少女をまっすぐに見つめる。

「はぁ……。まぁテメェがなにもんだろうが気にしねぇけどよ。アタシになんか用か?」

「ん、その口ぶりからすると貴女が辻堂さんで間違いないわけね?」

「ああ、喧嘩なら買うぜ?」

 挑発するように笑う愛に対し、少女は首を横に振る。

「別に貴女と戦おうって来たわけじゃないってば。ただ少し貴女のことが気になっただけよ」

「気になった…ねぇ。つーかそういうテメェは誰なんだよ」

「おっと、そういえば自己紹介がまだだったわね。はじめまして、私の名前は川神千李。最近だと多分ニュースやら新聞やらで聞いたことあるんじゃない?」

「川神……あぁ、そういえば父さんが言ってたな」

 愛はここ二、三日ニュースで取り上げられていたことと、彼女の父親が言っていたことを思い出す。確かに最近テレビでは川神院の川神鉄心が孫に敗れたという事が大々的に報道されていた。

「んで? そんなアンタがアタシに何の用だ?」


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